高学年になったのだから、時間管理もしっかりできるようになってほしい。けれど実際は、宿題など面倒なことは「あとでする」と先送りばかり…。親はどうしたらよいのでしょうか。そこで、人の時間の感じ方について実験心理学の手法を用いて研究している千葉大学大学院人文科学研究院教授の一川(いちかわ)誠さんに、「心の特性」を利用した時間管理の方法を聞きました。

【年齢別記事 小学校高学年のママ・パパ向け】
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 塾や学校の宿題は先送りにして、のんびりとゲームや動画を楽しんでいる子ども。親が「いつするの? 早くしないと間に合わないよ」と言っても「あとで。大丈夫」と涼しい顔。ようやく取りかかると、結局夜遅くまでかかってしまい、親はイライラ、子どもも寝不足に。

 こんなことを繰り返すと親は「このままで大丈夫なのだろうか」と心配になります。子どもが宿題を先送りにするのはなぜなのでしょうか。

 「それは自分の主観的な価値が下がるのを避けるためです

 こう説明するのは千葉大学大学院人文科学研究院教授の一川誠さんです。一川さんは、主観的な価値を下げるのを避けようとするのは、思春期独特の傾向と指摘します。

 「人は何かに取り組んだとき、それがうまくできないと自分の価値が主観的に下がります。そこで自己に対する過大な評価を守るために、あえて自分を不利な状況に置くことがあります。もしうまくできなくても『不利な状況だったからだ。条件がよければちゃんとできるはずだ』という言い訳を残せるからです。この傾向は大人にも認められますが、思春期は特に自分の価値が下がる行動を無意識に避けることがあります。

 また、自分の失敗はあまり認識されず、成功した経験は記憶に残りやすいです。すると自分の能力を過大評価し、失敗を繰り返すことになります。それが宿題の先送りに現れやすいのです」

 こうなったときに親が気を付けてあげたいのが、子どもの主観的価値が実際に下がってしまうことです。宿題が終わらなくて親に怒られたり、時間不足で間違いが多かったりする失敗を繰り返すうちに『もしかして自分は本当は能力がないのでは』と思い始めてしまうからです。

 実際には先送りせず、早めに取り組むほうが、時間を十分かけることができ、質の高いアウトプットを出すことができます。早めに取り組むと、対象に対して積極的になり、モチベーションが強くなるという特性があることも知られています。

 子どもの「先送り癖」をやめさせ、早めに取り組む癖を付けさせることは、子どもの自尊心を守ることにもつながります。親ができることを次ページから聞いていきましょう。

「先送り癖」をやめさせる4つの策

1 ○○○○○○を片付ける
2 途中に○○○○○を置く
3 ○○○○○○○○○の時間をプラスして予定する
4 ○○が入らないように気を付ける
次ページで詳しく説明します。