2021年版の手帳が文具店や書店に並ぶ季節です。近年は、小学生向けの手帳も発売されており、自己管理力やタイムマネジメント力の向上を期待して、手に取ったことのある人も多いのではないでしょうか。実際、緊急事態宣言下の休校期間中、「子どもが一人で学校や塾の課題を管理できるように使わせていた」という声も少なくありません。上編・下編に分けて、子どもの手帳術を紹介します。上編では小学生のうちから手帳をつける目的や効果と親の寄り添い方を、下編では具体的な方法について、『小学生のための生活習慣力アップノート』などの著書がある早稲田大学教職大学院教授の田中博之さんに聞きました。

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手帳をつけることで身につく子どもの力とは

 小学生のうちから手帳? 早すぎない?

 そうした印象を持った人もいるかもしれません。しかし、早稲田大学教職大学院教授の田中博之さんは、「小学校高学年は、手帳をスタートするには適した時期です」と話します。「子どもは小学4年生頃になると、大人への依存を抜け出し、子ども同士で影響し合って成長していきます。いわば自立の一歩を踏み出す時期。自分の行動を客観的に見つめ、反省して、改善できる能力も備わってくるので、決して早すぎることはありません」

 親としては、「いちいち言わなくても、子どもが自発的に毎日宿題をするようになってほしい」「時間がきたら、一人で習い事に行けるようになってほしい」「ゲームの時間を守れるようになってほしい」など、手帳をつけることに、タイムマジメント力がつくことを期待してしまいます。でも、「それは二の次でいいのです」と田中さん。手帳をつける目的や効果について、次のように話します。

 「最近の小学生は、スマホ、ゲーム、ネット、漫画など遊びのツールがたくさんあります。夜遅くまでゲームをして、朝起きることができないなど、生活習慣も乱れがちです。高学年になると、宿題などのやるべきことをきちんとやる子とやらない子の差が出てきます。そこで1日のタイムスケジュールに行動を記録して、『見える化』してみると、『ゲーム時間が長すぎるな』など、自分の生活習慣に気づくきっかけになります。手帳を通して、修正しなければいけないことに気づくなど、自主性・自律性が養われるのです

 一方で、習い事や塾、スポーツクラブなどで、毎日を忙しく過ごす小学生もいます。中には、親からのやらされ感で、強いストレスを感じている子もいます。特に、親の期待に応えようと一生懸命がんばるタイプの子は、中学・高校で燃え尽きてしまうこともあります。そうした子どもたちにとっては、手帳をつけることが、目標や、それを実行する意義を考えるきっかけになり、勉強や習い事に主体的に取り組めるようになるという効果があります」

 田中さんは、子どもの将来を見据えたときに、子ども自身が「自分の生活は、自分でデザインする」という意識を持つことが重要だと強調します。そのためのツールとして、手帳はとても有効というわけです。

 しかし、子どもに手帳を渡すだけでは、子どもはちゃんと使えるようになりません。手帳を交換日記のように使って、親子で密にコミュニケーションをとりながらやれば効果が高まります。次のページから、手帳に書き込みたいことに加えて、子どもが手帳をつける際の親の見守り方について紹介します。