思春期にさしかかった子どもは、親に対し距離を置いて批判的な視点を持つようになることを前回紹介しました。一方で学校では、周りと自分との違いに敏感になり、時には劣等感を抱くなど複雑な内面を抱えながら過ごしています。友達関係でうまくいかないこともあるかもしれませんが、かといって「何か悩みはある?」と聞いて素直に答えてくれる年ごろではありません。

 親としては、どのようなスタンスでわが子を見守ればいいのでしょうか。チャイルドファミリーコンサルタントのやまがたてるえさんは「子どもの世界に触れる」がキーワードになると話します。

【年齢別特集 小学校高学年のママ・パパ向け】
(1) 災害、食の安全…リスク管理に「絶対」はない
(2) 子どものリスク判断には「身近な例との比較」不可欠
(3) 思春期の親への反抗 親は「来たか!」と面白がろう
(4) 友達関係の悩み 親にできるのは「安全基地」づくり ←今回はココ

 子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

女子は「所属感」を保つために、誰かを仲間外れにする

 子どもの人間関係の中心が親から友達へと移行する中で、けんかや仲間外れなど、親には見えない学校生活での悩みも増えていきます。今の子どもたちはインターネットやSNSを当たり前に使いこなす世代。友達とのコミュニケーションの取り方も多様になり、思いもかけないところでつらい思いをしているかもしれません。「友達とのけんかも、やっぱり深刻化はしていますね」とやまがたさんも話します。

 「高学年になると、小学生でもスマートフォンを持つ子が出てきます。それで、グループLINEで仲間外れにされたり、過去の会話の内容をスクリーンショットして、『前にこういうこと言ってたよね?』って問い詰められたりすることがあるんです。

 あるケースでは、LINEばかりやっている娘に『ちょっとやり過ぎだと思うけど、あなたはどう思う?』と親が質問したら、『やっていないと、外されている感じがするんだよね』と答えたそうです。思春期は『所属感』が大切なキーワード。それを保つために、女の子は仲良しグループの中でも、わざと誰かを外す傾向もあります

 ちょっとした仲間外れの行動は子どもの発達の過程でどうしても起こること。特に女の子の間ではしばしば見られます。やり方が悪質で精神的苦痛があまりにも大きいなど、度が過ぎるケースは別ですが、仲間外れ自体を解消しなくてはと考える必要はないといいます。とはいえ、もし外される立場になったら、子どもがつらい思いをするのは事実。親が力になれることはないのでしょうか。

 「子ども自身が自分で人間関係を作っていかなければいけない時期に入るので、親はもう見守るしかありません。一線を越えているなと思ったときには助けたり、ダメなものはダメと言ってあげたりしなくてはいけませんが、どんなに友達関係に悩んだとしても、大事なのは子ども自身で決めること。そのときに、家がほっとできる安全基地であり、親は何があっても味方だというスタンスを見せてあげてほしいのです

 見るからに元気がなかったり、しゅんとしていたりしたら、まずは事情を知りたくなるものですが、そこでストレートに「学校で何かあったの?」と聞くのはエラー。「私のことを探ろうとしている」と反発し、「何かあったって、見て分からないの?」と返ってきてしまうでしょう。

 では、子どもの心を安心させるために、どんな言葉をかけたらいいのでしょうか。

<次のページからの内容>
● 元気がない子が、LINEを通して本音を話してくれた
● 夢中になっている音楽やマンガ、ゲームを一緒に楽しんでみる
● 「あなたがいてくれるだけでいい」というメッセージを伝えて
● 思春期こそ、子どもの「having」ではなく「being」を大切にする