「うざい!」「分かってない!」「うるさい!」……。小学校高学年になってくると、親が話しかけたときに、こんな反発の言葉が返ってくることが増えてきます。少し前まで素直でママに甘えていた子が急に別人のような顔を見せ始めたら、戸惑うのは当然のこと。親だって人間ですから、「何でそんな態度なの!」と、感情的な言い合いになってしまうかもしれません。

 しかし、子どものこうした態度の変化は成長の表れ。子どもが反抗してきたら、「お、来たな!」と面白がるくらいがいいと、小学生の心と体の成長について考える連載でもおなじみのチャイルドファミリーコンサルタント、やまがたてるえさんは言います。高学年の子どもとの親子関係について、やまがたさんに聞きました。

【年齢別特集 小学校高学年のママ・パパ向け】
(1) 災害、食の安全…リスク管理に「絶対」はない
(2) 子どものリスク判断には「身近な例との比較」が不可欠
(3) 思春期の親への反抗 親は「来たか!」と面白がろう ←今回はココ
(4) 友達関係の悩み 親にできるのは「安全基地」づくり

 子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

親の間違いをジャッジする視点を持つようになる時期

 「高学年は思春期の入り口に立つ時期。周囲の目を気にして行動するようになり、友達との共通点にも、逆に違いにも敏感になります。親から見てすごく分かりやすいのが、授業参観に行くと手が挙がらなくなること。人との違いで劣等感を抱いたりもするし、逆に高揚感を覚えて『もっと頑張ろう』と伸びていく子と二極化していく面もあります」。この時期の子ども内面で起きている変化について、やまがたさんはこう話します。

 そして、人間関係の中心が親から友達へと移り、親との距離感が出てくるのも高学年の大きな変化です。

 「『お母さん、それは前に言っていたことと矛盾するよね』『私には〇〇しろって言うけど、自分はできてないよね』というように、親の間違いをジャッジする視点を持つようになります。また、週末は家族で出かける予定になっていたのに、『友達と遊びに行くから』と断られてしまうなど、それまでになかった『親より友達を優先する』という行動に、びっくりすることが多くなると思います」

反抗を強く感じるのは、「親が上、子が下」という意識のため

 やまがたさんは、「子どもが反抗してくるようになった」と親が強く感じるのは、日本にはそもそも「親が上、子どもが下」という儒教的な考え方が根付いていることも影響しているのではないかといいます。

 「思春期というのは本当に独特な時期で、私はよく『さなぎの中身』と言うんです。さなぎの中ってどろどろですよね。子ども自身も、親には言えない悩みや葛藤を抱えるようになり、自分でもどうしていいか分からず、出口がなくて苦しくてぐちゃぐちゃになっていたりする。そういうもやもやした状態のなかで感情があふれて、自分でも言いたくないのに親につっかかってしまうんです。

 日本は親子の間に『対等な会話』をする経験があまりにもないので、急な変化は親にとってもきついものに感じられます。例えるなら、部下が急に伸びてきて物申すようになり、嫌になる上司の心境です(笑)。

 高学年の子との親子ゲンカの多くはそういうことだと思います。急激に来るし、親のほうも忙しかったりして心の余裕がないと、子どもの態度に怒りのボルテージが上がってしまいます」

 幼いときから子どもを独立した一個人として扱う欧米に対し、日本では多くの人にとって「子は親に従うもの」という意識がベースにあります。また、共働きで子育てをしていると、限られた時間の中で、「早く〇〇してね」といった「指示」をする場面がどうしても多くなり、それまでじっくり話をする機会もなかなか持てなかったかもしれません。そのため、親への批判的な言動が生意気なものに映りやすいのです。

 また、親子ゲンカのきっかけになりやすい、注意すべき子どもの内面の変化は他にもあるといいます。それは何でしょうか。

<次のページからの内容>
● 頑張りを褒めたのに、「そんなのウソだ!」とキレられる
● 親に対する間違いの指摘、事実なら「ちゃんと謝ろう」
● この時期こそ、親は子どもと接するときに心の余裕が必要
● 親子関係は「新章」に突入! どんどんトライアンドエラーを