「嘘つきは泥棒のはじまり」ということわざがあるように、「嘘をつく=悪いこと」と考えている人は多いでしょう。しかし、スクールカウンセラー経験のある臨床心理士・精神保健福祉士の井上序子さんは、心理学では子どもの嘘について、「つかざるを得ない何らかの事情がある」と考えるといいます。高学年の子どもの嘘で、親が知っておきたいことやその対処法などについて教えてもらいました。

【年齢別特集 小学校高学年のママ・パパ向け】
(1) 子どもの噓は親がつかせている? 高学年の親の対処法 ←今回はココ
(2) 高学年 きょうだいゲンカを減らすための方法は?
(3) 親のお金を子が取っても「一度は見逃していい」理由とは

見逃していい嘘と見逃してはいけない嘘がある

 もし、わが子が嘘をついていると分かったらどうしますか? 例えば、まだ終わっていない宿題を「終わった」と言ったり、友達とのケンカで、本当は自分から手を出したのに「相手が先にたたいたからやり返した」と言ったりしたら…。

 思春期を迎える高学年になると、親への隠し事が増えてきます。「この子のためにならない」と考え、嘘と分かると厳しく叱ることもあるかもしれません。そうした対応について、臨床心理士の井上序子さんはこう指摘します。

 「心理学では、『嘘をつくのはいけないこと』への明確な答えはなく、むしろ、嘘をつくことは、社会生活を送る上での処世術の一つで、子どもが嘘をつくのも、大人になるまでの正常な発達という考え方をします。『嘘をつくこと自体が悪いこと』と教えられてきた親からすると腑(ふ)に落ちないかもしれませんが、基本的に、子どもが嘘をついても、『責める』『叱る』などの対応はとらないようにします

 とはいえ、子どもの噓によって他人に迷惑をかけたり、たびたび嘘をつくようになったら見過ごすわけにはいきません。どう対処すべきでしょうか。

 「嘘には、見逃していい嘘と見逃してはいけない嘘があります。例えば、昨日見た夢を、さも現実にあったことのように話したり、予定がないのにあるふりをしたりする嘘であれば、そこまで気にする必要はありません。一方、見逃してはいけない嘘とは、子どもからの何らかのサインである場合などです。高学年の子どもが嘘をつくとき、背景には『人間関係』が影響していることも少なくありません。学校であれば教師や友達、家庭であれば親やきょうだいなどとの関係で困っていることがあるのかもしれない、という視点を持つことが大切です」

 子どもが親に対してつく「見逃してはいけない嘘」と、そうした嘘をつく理由、親が取りたい行動(対処法)などについて、次のページから、詳しく解説します。