中学受験もこれからが追い込みのシーズン。「より学力の高い友達に恵まれる環境こそが、わが子にとって望ましいに違いない」と、子どもと二人三脚で努力している時期ではないでしょうか。こうした少しでも偏差値の高い学校を目指す親子に対し「優秀な友達に囲まれる環境は、かえって学力に負の効果を生み出すというデータがあります」と話すのは、教育経済学の第一人者の中室牧子さん。学校内での順位が学力などに与える影響について、お話をうかがいました。(DUAL特選シリーズ/2019年11月27日公開記事)

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学校やクラス内での「順位」に着目した研究が話題

 昔から「朱に交われば赤くなる」といわれるように、友人たちと過ごす環境は、わが子に良くも悪くも影響を及ぼすと考え、良い方向に影響を受けるよう子どもを少しでも偏差値の高い中学に進学させたいと願っている親も少なくないのではないでしょうか。

 一方、「鶏口牛後」という言葉もある通り、無理をしてレベルの高い学校に入るよりは、次のランクの学校でトップにいる方がよいという考え方もあります。子どもの志望校選びでは多少背伸びをしてでもレベルの高い学校を目指すのと、学内で上位になれる学校を目指すのとでは、どちらを選ぶのが正解なのでしょう。慶應義塾大学総合政策学部教授の中室牧子さんは次のように言います。

 「周囲の友達の学力や行動が、自分自身の学力や行動に与える影響については、『ピア効果』と呼ばれ、比較的古くから教育経済学の研究対象になってきました。1990年代までは、学力の高い優秀な友人との交流によって、自分自身の学力も高くなる、つまり『朱に交われば赤くなる』(環境や友人から与えられる影響は大きい)ことを示す研究が主流でした。このため、保護者世代には『子どもを少しでも偏差値の高い学校に進学させたい』という考えを持つ人も多いと思われます。しかし、最近の研究では、学力の高い友人との交流によって自分の学力も上がるどうかについては、研究者の間でも意見が分かれ始めています。一部の生徒たちには、学力の高い優秀な友人との交流がかえってマイナスになるケースが指摘されているのです。特に注目されている研究は、学校やクラス内での『順位』に着目したものです。まさに『鶏口牛後』とでもいうべき状況であることを示す実証研究も出てきています」

 次のページから、友達の学力が自分自身の学力に与える影響について、中室さんに説明してもらいます。