子どもがまだ小さくて手が掛かる時期、共働き親はママ・パパ2人で家事・育児を回していきます。かつてはママが主に担っていた家事や育児も、パパのほうが得意で何でもやってあげている家庭ももはや珍しくありません。ただし、そんな、“ママ”が2人いるような状態が、子どもが高学年になっても続いているのは、子どもの自立を促す上で問題があるようです。

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ママが2人いるような関わり方は効率はいいが…

 幼い子は何をするにも時間がかかり、うまくはできません。日々、時間に追われている共働き親は、自分がやってあげたほうが早いし間違いもないので、つい手や口を出しがちです。そうした親の行動が、保育園や低学年時代だけでなく、高学年になった今も続いていませんか? 学校の時間割や登校準備、習い事の支度、着替えの用意などを代わってあげていないでしょうか。受験勉強で忙しいからと手伝いを免除するなど、子どもが自分でできることでもママ、パパがやってあげたりしている家庭もあるかもしれません。

 子育てコーチングの専門家の菅原裕子さんは、子どもが高学年になってもこのような関わり方をしている場合は、親の役割を改めて考えてみることが必要だと話します。子どもに自律(自分を律して行動を選択できること)を教え、自立させるためには、母性と父性がバランスよく働くことが必要だからです。母性と父性の特徴と役割について菅原さんは次のように説明します。

●母性:目の前にある子どものニーズを満たそうとする。子どもは親の愛情を直接的に感じ、自己肯定感が育つ

●父性:子どもの「少し先」を見て、子どもが自分でニーズを満たせるようになることを奨励する。子どもを信じてやらせることで「できる」力が育つ

 母性、父性といっても必ずしもママが母性を、パパが父性を担うというわけではありません。両親がそろっていることが大切ということでもありません。1人の人間の中には、母性、父性の両方があり、状況に応じて使い分けています。シングルで子育てをしているママ/パパは、1人で2つの役割を切り替えながら子育てしています。一般的には女性は母性が強いといわれていますが、必ずしもそうではありません。パパのほうが母性が強い夫婦もいます。

 「夫婦は、お互いが子どもとどう関わっているかを見て『向こうは母性が強いから、私は父性を発揮しよう』などと無意識にバランスを取ろうとするものです。お互いの特性を生かすことによって、自然に母性、父性がバランスよく働いているのです。

 中には共働きの暮らしを効率よく回すことを優先して、ママとパパが共に母性を強く発揮している家庭もあります。例えば、ママがとても忙しくて1人では子どもの世話を充分にできないと、パパにも『○○をやってあげて』『△△に気をつけてあげて』と母性を強く求めてしまうことがあるのです。その通りにしないと、ママの機嫌が悪くなってしまうため、パパは従わざるを得ない。そうした家庭では父性的な関わりが不足しがちです」

 父性的な関わり方が不足すると、子どもは自分でできることが増えません。後述する「対応力」が育たないまま楽なほうに流れて、思春期を迎えてしまい、親が困り果てる展開になることがある、と菅原さんは指摘します。詳しく聞いていきましょう。

【この記事で読める内容】
・「やりたくないけれど、しなければ」という主体性と対応力は父性によって育つ

・不安定な思春期の子を支える、親からの「メッセージ」とは

・思春期以降の母性はどう伝えるのが正解?

・子どもが「自律を否定されたような気がして、ますます拒否したくなる」親のNG言動とは

・母性的な関わりが強くなりすぎるのを抑える「父性」の言葉とは