子育ては「褒めることが大切」。よく聞く言葉ですが、あまりにも褒めることを重視しすぎると、子どもに悪影響を与えることもあるようです。大切なのは子育てに「父性」をバランスよく取り入れていくことであり、それは父親が育児をするだけで解決する問題ではない、と専門家は指摘します。では、そもそも父性とはどのようなものなのでしょうか。また、どのように取り入れればよいのでしょうか。

【年齢別記事 小学校高学年のママ・パパ向け】
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(2) 「まじ」「やば」…感情の言葉置き換え力上げるには
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好かれたいために母性を優先しがち

 いくつになっても子どもはかわいいもの。言うことを聞かなかったり、マナーが悪かったりしてもついつい叱れない親もいるのではないでしょうか。でも、そんな状況が続くと子どもの成長に悪影響を及ぼすこともあるようです。

 親が子どもにする行為は母性によるものと父性によるものに分けられます。学術的には、子どもの希望や要求を満たし、温かく包み込むような役割を果たすのが母性であり、善悪やルール、マナーなどを伝える役割を果たすものが父性とされています。

 間違ったことをしている子どもを叱れない、注意できないというのは家庭内で父性が欠けている状況ということになります。「実は、そんな家庭が増えてきている」と心理学者でMP人間科学研究所代表の榎本博明さんは話します。

 「子育てをする場合、要求を受け入れ包み込むような母性を発揮したほうが子どもからは好かれます。ですから、好かれたいがために親もついつい母性ばかりを優先しがちなのです」

 「子どもはできるだけ褒めて、のびのびと育ててあげたい」「友達のような親子になりたい」「子どもに嫌われたくない」と考える親は少なくないかもしれません。でも、それでは「その子自身がきちんと育たなくなるかもしれない」と榎本さん。「イクメンという言葉が流行し、父親が育児にかかわることも増えてきました。でも、父親の中にも、子どもに母性ばかりで接する人が多いようです」と付け加えます。

 では、幼いころから父性が欠けた子育てをしていると、成長してから子どもにどんな影響が出てくるのでしょうか。また、父性が欠けた状態で子育てをしてきた家庭が、子どもが高学年になった今からでもできることはあるのでしょうか。

 「父性も母性もできるだけ子どもが幼いころからバランスよく発揮しておくことが大切ですが、たとえ子どもが小学校高学年や中学生だったとしても改善を図ることは可能です」と榎本さんは話します。

この記事で分かること
・父性は父親だけのものではない
・家庭での父性の欠如は友達づくりにも影響
・父性を持って接するか、母性を持って接するか、夫婦間の連携が重要に
・ルールを守っていない親からは父性は伝わりにくい