子どもが小学校高学年になると、塾に通う子どもたちも増え、周りとの学力差が気になってしまうことがあるかもしれません。子どもの性格や成長のスピードを理解しようとする前に、「うちの子は周りと比べて、どんなに勉強しても模試の成績が伸びない」「要領が悪い」「集中力がない」……と、ついつい他の子と比べて不安になっている人も多いのではないでしょうか。『女の子の学力の伸ばし方』『男の子の学力の伸ばし方』(共に、ダイヤモンド社)の著者で、進学塾「VAMOS(バモス)」代表の富永雄輔さんに、高学年で顕著に現れる、男女の特徴について聞きました。今回は女の子編。女子の特徴を生かしながら、学力の向上を促す方法について紹介します。

【年齢別記事 小学校高学年のママ・パパ向け】
(1) 家の中ですぐキレるわが子 親のNG対応とは?
(2) 学校でもキレる子の背景に生きづらさ 「境界知能」とは
(3) 高学年女子のやる気のスイッチは「身近にいる憧れの人」 ←今回はココ
(4) 高学年男子の伸ばし方 「苦手の克服」に固執しすぎない

あえて性差で考える理由とは?

 「9歳の壁」あるいは「小4の壁」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。小学校4年生になると、国語や算数の問題が抽象的になったり、思考力が問われたりするなど、勉強内容が難しくなります。小学3年生までの学習内容や方法だけでは対応できなくなり、約3割の子どもたちが勉強につまずくといわれています。文部科学省が公表している「子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題」(報告書「子どもの徳育の充実に向けた在り方について」内)によると、9歳ごろから心身や脳の発達に顕著な差が生じやすくなることが原因だそう。

 子どもの発達における「性差」に着目し、子どもたちへの指導に生かしている進学塾「VAMOS(バモス)」代表の富永雄輔さんはこう話します。

 「私個人としては、『女の子だからこう』『男の子だからこう』という明確な区別はないと思っています。ただ、どうしても小学校4~5年生くらいになってくると、脳や心、体の成長スピードに個人差が出てきてしまうのは事実です。僕自身も15年塾講師として多くの子どもたちを見てきましたが、女の子と男の子の成長スピードは違うと感じます。あえて性別で区別して考えるほうが、親が楽になることがあると思います。

 例えば、脳の発達にも男女差はあるといわれています。一般に、女の子は言語と空間認識力をつかさどる部分がバランスよく発達しますが、男の子は空間認識力をつかさどる部分のほうが先立って発達し、言語の発達は遅れる傾向があります。どちらかというと女の子のほうが国語を、男の子のほうが算数を好きだったり得意だったりして、差が生じがちなのも脳の発達に差があるから。もちろん、女の子の特徴として挙げられているものが男の子に当てはまる場合も、その逆の場合も普通にあります。女の子の中にも、一般的な男の子に近い要素を持っている子もいますし、その逆もあるわけです。ですので、両性の特徴をミックスしながら考えることが大事です」

女の子タイプ 男の子タイプ
1 マルチタスクが得意 要領が悪い
2 頑固な一面がある プライドが高い
3 納得/信頼しないと受け入れられない 自分で失敗しないと分からない
4 憧れの人がいると頑張れる ご褒美で頑張れる
5 共感を求める 競争好きでライバル意識が強い

 「女の子は大人が思っている以上に大人びています」と富永さんは言います。女の子の特徴を踏まえ、親は子どもの学力を上げるためにどのようなアプローチをすれば効果が得られやすいのでしょうか。次ページから詳しく説明していきます。