前回は、子どもが発する「ストレスサイン」を紹介しました。夫婦間の問題や親のメンタル不調がこうした子どものストレスの原因になっていることがあります。もしも親のほうが心の課題を抱えていて、それが子どもに対して影響を与えている状況であれば、親が自分自身を上手にケアしていくことが大切です。

【年齢別特集 高学年のママ・パパ向け】
(1) ネット社会を生きる小学生の「恋愛」と親の関わり方
(2) 体は大きくても心は繊細な高学年 親はサインに注意
(3) 夫婦関係や親のメンタル不調が子どものストレス源に←今回はココ

普段から本音を話さないため、いざというとき大きく衝突

 夫婦といえど、お互いに忙しくて会話が少ない……。例えばLINEなどのSNSで夫婦で交わす会話といえば、「今日は残業」「子どもの保護者面談に代わりに行ってくれる?」といった業務連絡だけ。気づいてみると家庭でもメッセージでしかやり取りをしていないという人もいるかもしれません。

 しかし、実は家族の重大局面において、子どもに無用のストレスをかけないためには、夫婦の会話が重要になってきます。そのためには、家族で適切なコミュニケーションを取り、合意に基づく意思決定を行うという、意外と難易度の高いスキルが必要とされます。

 「日ごろから夫婦間で十分な意思疎通がされていないと、夫婦げんかをしたときに壊滅的、不可逆的な結果をもたらすかもしれないと互いに不安になります。そうすると、意見の相違がありそうな重大なことほど、衝突を避けがちになります。だから、子どもと実際に接する場面で夫婦のスタンスの相違が露呈し、間に挟まれた子どもを困惑させてしまうことになるのです」と、名古屋大学医学部附属病院・親と子どもの心療科准教授の岡田俊さんは指摘します。

 つまり、普段から夫婦間で本音を出していないのに、大事な局面、主に子どもの問題になるとお互いが譲れなくなり、対立してしまいます。子どもの目の前で夫婦が大きくぶつかってしまうことが、子どもにストレスを与えてしまうというわけです。次のページで具体的な衝突例と、そこに隠された心理を紹介します。