中学受験をするか、しないか――。その決断は難しいものですが、決めたら決めたで、不安はつきまとうものです。地元の公立中学校へ進学するという選択をした家庭では、「うちは受験をしないけれど、このままでいいのかしら?」と不安を感じている親も少なくありません。小4~6年の時期、授業や学校の宿題以外の家庭学習に関して、親はどのように考えておけばいいのでしょうか。「遊んでていいの?」「中学受験をしないからこそ、やっておいたほうがいいことは?」「どの教科を伸ばすべき?」など親がよく抱く疑問について、2回に分けて、専門家のアドバイスを紹介します。

【年齢別特集 高学年のママ・パパ向け】
(1) 「思春期のせい」にしないで親は自分を見直してみる
(2) “親になる練習”足りていないと思春期でこじれる
(3) 中学受験しない子の家庭学習で大切なこととは ←今回はココ
(4) 中学受験しない子は今から高校受験を意識するべき?

子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

しないと決めたら決めたで不安になってしまう

 「中学受験をしない」という選択をした家庭では、「小学生なのに夜遅くまで塾通いをさせてかわいそう」「もっと子どもらしい生活を送らせてあげればいいのに・・・」など、中学受験に対してマイナスのイメージを持っている人も少なくありません。

 一般的に中学受験をする子は、小学3年生の2月から大手進学塾に通い、そこから3年かけて中学受験のための勉強をします。中学受験の入試問題は出題範囲が膨大で、さらに小学校の授業で習う内容よりもはるかに難しいため、塾へ通うとおのずと先取り学習をすることになります。高学年の段階で、中学受験をする子としない子との間に学力の差が生じてしまうことはあり得ます

 そこで、こんな疑問が湧いてきます。

疑問1 中学受験をする子としない子には大きな差がつくの?

 「中学受験をするか、しないかは人生における大きな選択の一つかもしれませんが、それがゴールではありません。現時点では、中学受験をする子としない子との間に、学力の差があるかもしれません。でも、それは学習の速度の違いにすぎず、大人になったときに大きな差が出るわけではないのです」。そう話すのは、「花まる学習会」代表の高濱正伸さんです。

 「確かに大学受験だけを考えれば、私立中高一貫校へ進学したほうが、学習カリキュラムが早く進むぶん、受験には有利です。また、中学受験をする子は、小学生の遊びたい盛りに、志望校合格という目標に向かって、ある程度の我慢をしながら勉強をするため、学力が伸びるだけでなく、精神的にも大きく成長します。でも、精神面は、受験をした子もしない子も中学3年生くらいでほぼ同じになります。むしろ、中学受験をしない子は、その先の高校受験で精神面が鍛えられるし、似たような価値観の家庭の子が集まる私学よりも、多様性のある環境で過ごすため、骨太に育ちます」(高濱さん)

 「高学年になると、中学受験をする子としない子では、生活のリズムが大きく変わってきます。周りに中学受験をする子がいると、その大変さを見て、『うちの子はこのままで大丈夫なのだろうか?』と、心が揺らぐことがあるかもしれません。でも、現時点で中学受験をする子としない子の学力や精神面を比べても意味を成しません」。そう話すのは、東京と京都で勉強のやり方を教える塾「プラスティー」を運営する塾長の八尾直輝さんです。

 「小学生の子どもの成長には個人差があります。子どもの成長曲線は明確に分かるものではないので、どの受験が適しているのか見極めるのは難しいものです。ご家庭で『うちは中学受験をしないという選択』をしたなら、親はブレないことが大事。親の気持ちがブレると、子どもの心は安定しません」と八尾さんはアドバイスします。

 中学受験をしないと決めたのなら、そのメリットを生かせることはないでしょうか?

<次のページからの内容>
● 中学受験をしないからこそ、やっておいたほうがいいことは?
● 中学受験をしない子が、高学年のうちにやっておきたい3つのこと
● 遊んでいてもいいの?
● どの教科を重点的に頑張るべきか
● 家庭学習はどれくらいの時間を割くべきなのか