小学校高学年になると、塾通いなどをきっかけに自分のスマホを持つ子が増え始めます。LINEなどのSNS(交流サイト)を使い、友達同士で活発にやりとりをする機会も増えるでしょう。スクールカウンセラーとして20年以上のキャリアを持つ明治大学文学部教授の諸富祥彦さんによると、今、子ども同士の人間関係のトラブルの多くがスマホを介して起きており、スマホ依存に陥る子どもも少なくないと言います。「スマホを持つのはできるだけ遅いほうがいいが、持たせるなら、親は子どものプライバシーを十分に尊重し、勝手にスマホを見ないという覚悟が必要」というのが諸富さんの持論。高学年親が心掛けるべき、スマホとの付き合い方について聞きました。

【年齢別記事 小学校高学年のママ・パパ向け】
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長時間勉強してもスマホをやり過ぎると効果がなくなる

 「スマホの使用は学力低下を引き起こすことが分かってきています」と諸富さんは言います。

 仙台市で2013年に行われた、小学5年生から中学3年生までを対象にした調査(※)によると、数学の点数と、家での勉強時間、スマホを使っている時間との間に関係があることが明らかになっています。

 「2時間以上勉強して、スマホ使用時間が1時間未満の子」の平均点が75点だったのに対し、「勉強時間は30分未満だけど、スマホを使わない子」の平均点は63点、「2時間以上勉強して、スマホを4時間以上使う子」の平均点は58点という結果になったのです。

*平成25年度仙台市教育委員会と東北大学加齢医学研究所の調査による

 つまり、2時間以上勉強している子どもでも、スマホを使い過ぎれば、ほとんど勉強をしていない子よりも点数が低くなってしまうのです。スマホ使用が1時間以内であれば、成績に影響が出ないことが同調査から分かりました。気分転換や息抜きとしてうまくスマホを使うことができれば良い作用をもたらすのではないかと考えられるそうです。

 「同様にLINEの使用時間で絞り込んだ調査では、さらに学力低下が顕著でした。LINEの通知音が鳴ると、どんなメッセージが来ているのか、返信しないと仲間外れにされてしまうのでは、といったことが気になって集中力が落ちます。特に思春期の子どもは仲間外れにされることへの不安が大きい。集中力の低下から成績が落ちてしまうのです」と諸富さんは指摘します。小学校の高学年であればなおさら、学習への影響を考えても、スマホの利用時間は1日1時間以内にとどめたいところです。

 諸富さんは「子どものスマホデビューは遅いに越したことはありませんが、持たせる場合は親は強い覚悟が必要です。最も避けたいのは、内容が気になるからといって、親が勝手に子どものスマホを確認すること。特に子どもが設定したロックを解除し、内容をこっそり見る、という行為はDV(ドメスティックバイオレンス)に等しいのです」と言います。

 親が子どものスマホを見て何が悪いのか?と思うかもしれませんが、「親子であっても個人としてのプライバシーは守られるべきです」と諸富さん。では親は、子どもをスマホの害から守るために、どうすればいいのでしょうか。次ページから具体的に解説してもらいます。

次ページから解説します!
●常習的にならないようなルールはどう作る?
●設定したいルールはおもに3つ
●LINE依存を防ぐためのルールの一例
●親が子のスマホを見るのが「非常に危険なこと」だという理由は?
●スマホの使い方を教える際にセットで教えるべきこと
●スマホ依存の子に見られる「4つのサイン」