2011年、アメリカの研究者キャシー・デビッドソンは「2011年にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」という予測を出し、世界中を驚かせました。別の研究者は「人間が行う仕事の約半分が機械に奪われるだろう」とも予測しています。実際、企業では業務の効率化や自動化が進み、大企業では新卒の一般職採用がどんどん減らされている現状があります。これからAIの導入が進む社会に向けて、私たちはどのような子育てをしていけばよいのでしょうか。前回に続き、キャリア教育の専門家である法政大学キャリアデザイン学部教授の児美川孝一郎先生にお話を聞きました。

【年齢別特集 小学校高学年のママ・パパ向け】
(1) 反抗期こそ役に立つ 共働き親子のリビング活用法
(2) 頭のいい子はリビングで育つ 受験に向けた環境作り
(3) 「夢追い型」で大丈夫?ホントに役立つキャリア教育
(4) AI時代の子どもたちに夢の見方をどう教える? ←今回はココ

子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

仕事の形は変わっていく。それに対応できることが大切

児美川孝一郎先生
児美川孝一郎先生

 「駅を想像してください。読者の皆さんが幼いころは改札に駅員さんがいて切符を切っていましたね。今は自動改札になっていますが、駅にはやはり駅員さんがいて、別の仕事をしています。最近はタクシーの自動運転が話題になっていますが、もし1台、1台の自動車に運転手がいなくなったとしても、全体の安全管理をする人間は必要でしょう。技術が進化して、今ある仕事がなくなったとしても、新たな仕事は出てくると思います」

 冒頭で紹介した2人の研究者の予測について、児美川先生はこのように話します。「その“新たな仕事”は反復的・自動的な仕事ではなく、自分で考え、判断するようなタイプの仕事になるでしょう。そこで必要になってくるのが、能動的に自分から動ける力です。従来の日本では、家庭に生まれ、学校や会社、社会に守られて一生を終えることができました。しかし、今後は自分で考え、行動していかないと物事は動かなくなります。そこには自分で決めたことは自分で責任を持つという意識も必要となります」

 だからと言って、今の子育ての方法を大きく変える必要はない、とも児美川先生は話します。「これまでの子育てを振り返って、少し過保護だったと思ったら、ちょっと自立させる方向にしてみてください。今までは親がやってあげていたことを、少し背伸びさせて子どもにやらせるというような積み重ねで良いと思います」

 「子どもは本来、自分で動きたいという欲求を持っています。赤ちゃんは興味を持ったものに寝返りをしたりハイハイをして近寄っていきますね。子どもはとてつもない好奇心と行動力、探求心を持っているのです。幼児になっても小学生になってもそうです。低学年の授業参観では、子どもたちは目を輝かせて「ハイ、ハイ」と手を挙げていましたね。しかし、小学6年生になったらどうでしょう。答えが分かっているにも関わらず、「ハイ」と手を挙げる子はごく少数になっていませんか?」

 これは親にも一因がある、と児美川先生。子どもが興味を持って手にしたものを親は「汚い、危ない」と取り上げたり、「急いでいるから」と行動を制したりしがちです。悪気はないかもしれませんが、その積み重ねから子どもは「自分から動こうとしてもいいことはない。怒られるだけ」と学んでしまい、挙手しない子になってしまうのだそうです。

 「本来人間には、“動きたい”という欲求があります。自由に動けるようにしてあげれば、子どもは試行錯誤をしながら、失敗と成功を繰り返して、興味のアンテナを高く伸ばしていくでしょう

<次のページからの内容>
● キャリアにつながる刺激や金銭体験が大切
● キャリア教育は仕事を選ぶことだけではない
● 学校生活のすべてがキャリア教育になる
● 物事の変化を楽しめる子に育てよう