「大きくなったら何になる?」。保育園で、学校で、家庭で何度も繰り返されてきた質問ではないでしょうか。「〇〇レンジャーのレッド!」「プリティ〇〇のキュア△△」などワクワクする夢は、成長するにつれて「公務員」「お医者さん」など、リアリティのあるものに変わってきます。小学校ではキャリア教育の一環として、自分の夢を発表させたりしています。中には「分からない」と口ごもって答えられない子もいますね。そうなると親は「うちの子は将来大丈夫なのかしら。もっとしっかりさせないと」とがっかりしたり、あせってしまいがちです。本来、小学校の段階ではどのようなキャリア教育が必要なのでしょうか。法政大学キャリアデザイン学部の児美川孝一郎教授にお聞きしました。

【年齢別特集 小学校高学年のママ・パパ向け】
(1) 反抗期こそ役に立つ 共働き親子のリビング活用法
(2) 頭のいい子はリビングで育つ 受験に向けた環境作り
(3) 「夢追い型」で大丈夫?ホントに役立つキャリア教育 ←今回はココ
(4) AI時代の子どもたちに夢の見方をどう教える?

子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

夢を持つことは悪くない。その先まで考えることが必要

 社会には夢があふれています。夢をかなえたスポーツ選手はキラキラ輝いて見えますが、実際に夢をかなえられる人はそれほど多くない。それでも夢を持つのはいいことなのでしょうか。低学年ならまだしも、もっと現実を見させたほうがいいのではないか、わが子が高学年になると、そんな風に考えてしまう人もいるのではないでしょうか。しかし、児美川先生は夢を語らせる現在のキャリア教育について、このように話します。

児美川孝一郎先生
児美川孝一郎先生

 「夢を持つのは決して悪いことではありません。ただ、今の学校で行われているキャリア教育は『あなたの夢は? 将来やりたいことは何ですか?』『●●です』で終わりの夢追い型です。しかし、本来のキャリア教育はここからがスタートです。じゃあ、その夢の世界をもってよく知っておこうよ、という探求心を芽生えさせ、その仕事について調べたり、実際にその仕事についている人に話を聞いたりすることが大切なのです。ネットで調べたり、人物ドキュメンタリーなどを読むのもいいでしょう」

 「そして、なぜそれが自分の夢なのだろう、単にテレビで見て憧れたのか、それともよくよく考えたうえでのことなのかを考えてみないといけません。更には、その夢は本当に自分に向いているのか、実現できそうなのか、自分に照らし合わせてみることも必要です」

 「夢に思っていることが、現実社会でどんな状況にあるのかもしっかり見定めないといけません。宇宙飛行士のように非常に希少性の高い職業であれば、『可能性がゼロではないけれど、ほとんどの人がなれない』ということも知っておくべきです。それなら、どうしようか。それでも頑張るというのでもいいですし、自分で納得のいく落としどころを見つけるのでもいい。宇宙飛行士は難しそうだけれど、宇宙飛行士の周りにはたくさんの職業がある。それならなぜ宇宙飛行士になりたいのかを考え、飛ぶのが好きなのか、宇宙が好きなのか、ロケットに憧れているのか、どのベクトルに興味があるかでも、夢の持ち方は変わってきます。しかし、こうしたプロセスが抜け落ちているのが、今のキャリア教育の現状なのです

<次のページからの内容>
● 学校でやらないなら、家庭で一緒に考えよう
● 社会のダイナミックな変化は親の感動と共に伝える
● 今、育てたいのはたくましさと探求心