子どもが高学年になると、会話が減って何を考えているのかわからない、こんな声が増えてきます。

「うん」と「別に…」「わかんない」しか言わない
友達のことを聞くと急に不機嫌になってしまう
リビングにいてもスマホかゲームばかりで会話がない
遊びも勉強もリビングでするので、ソファ周りが子どものものだらけ
子ども部屋は寝るだけの荷物置き場。子ども部屋はいらないの?

 部屋に閉じこもることはないけれど、リビングでいっしょにいても子どもの心が分からず、戸惑う親の姿が浮かび上がります。そこで今回は、住まいの面から、思春期の子どもたちとどのように付き合ったらよいのか、子どもの発達と家作りの研究に携わっている専門家にアドバイスをお聞きしました。

【年齢別特集 小学校高学年のママ・パパ向け】
(1) 反抗期こそ役に立つ 共働き親子のリビング活用法 ←今回はココ
(2) 頭のいい子はリビングで育つ 受験に向けた環境作り
(3) 「夢追い型」で大丈夫?ホントに役立つキャリア教育
(4) AI時代の子どもたちに夢の見方をどう教える?

子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

思春期の子供との会話に姿見も活躍

 「『うん』と『別に』しか言わなくなることもある思春期の子どもたち。そっけないようにみえて実は、親とつながっていたい気持ちがあります」と話すのはと話すのは積水ハウス「住生活研究所」所長の河崎由美子さんです。河崎さんは、同研究所を拠点に、子どものための住まいの環境など、日々の生活に密着した分野の研究開発に携わってきた、幸せな住生活提案の第一人者。自身も二十歳になる息子を持つ母親です。

 河崎さんによると、思春期の子どもたちとコミュニケーションを取りやすいのが“洗面所”なのだそうです。「エーッ!?」と思いますが、「思春期の子どもたは、自分が他者からどう見られているかとても気にしています。だから、鏡に自分の顔を映して1時間でも2時間でも見ていられる。鏡を見ながら『なんで私の目ってこんなに小さいのだろう』『ここの髪が跳ねてる!直さなきゃ』などと、自分と対話しています」

 これは子どもの心の成長にとってとても大切な時間なのだそう。「この時間があるから、自分は自分、人は人、という自我を持てるようになります。親は『また洗面所を占領して!』と思うかもしれませんが、その行動は認めてあげてください」と河崎さんは解説します。

 そんな子どもたちとコミュニケーションを取るきっかけとしては、「見栄え」に関するトークがよいのだそう。「その髪型いいね」「全身がシュッとして見えるね」「後ろの髪がちょっと跳ねてるよ」など、見たままを客観的に言ってあげるとよいと河崎さんは話します。

 「そうですよね。そこでおすすめなのが、リビングにもコンパクトな姿見を置くことです。必ずしも大きなものでなくても大丈夫。幅が15cmあれば、1m離れると全身が写ります。リビングの壁際に鏡があると自然に映り込むこともあるし、子どもがリビングでファッションチェックをする場面も出て来ます。そこで、親が『今日の服装、いけてるね』などと話しかけてあげると、会話を自然に始めやすくなります

”部屋干し”を見ながら、服の話をしてみよう

 自分の見栄えが気になってくる思春期だからこそ、服の話題はコミュニケーションのきっかけになるようです。「共働きだと洗濯物を室内干しにしている家庭が多いと思います。リビングに干しているとしたら、それも会話の糸口にもなるんですよ。子どもの服を見ながら、『ボタンが取れそうになっているよ。赤い糸で縫いつけたらポイントになるんじゃない?』と提案したり、子どもの方から『Tシャツの首元がよれてきちゃった。今度はこういうのが欲しいな』と言ってくるかもしれません。それがチャンスです」

 「ついでに『自分の服なんだから、自分で畳んでごらん』と畳み方を教えてあげたり、洗濯物の干し方のポイントをしえてあげるといいですね」。なるほど、自立に向かっていくわが子に家事のやり方を伝えることで、コミュニケーションを取るというわけですね。「スペースに余裕があれば、ベンチを置いて親子で並んで洗濯物を畳めるスペースを作るといいでしょう。スペースがなくても、アパレルショップの店員さんのように立ったまま畳めるか、ゲーム感覚でチャレンジするのも楽しいですよ」

<次のページからの内容>
● スマホは音出し、リビング充電
● 高学年になったら自分だけのコーナーを作ってあげて
● リビング階段なら子ども部屋にいても寂しくない