子どもにとって、自然の不思議に触れてセンス・オブ・ワンダー(The Sense of Wonder:人知を超えた神秘に驚く感性)を磨くことは、真の学びにつながる貴重な体験。しかし、コロナ下で何かと制限された日常が続く中、自然と触れ合う機会は確実に減っています。

低学年では、「低学年の学び 『センス・オブ・ワンダー』が土台に」で紹介したとおり、自然への関心を持つことが大事です。高学年ではそれをさらに深めて、視野を広げ、中学受験にも役立たせることができます。野外の実験教室「早稲田こどもフィールドサイエンス」を監修し、全国各地での出前授業を行う露木和男さんに、高学年のフィールドワークの進め方について聞きました。

【年齢別記事 小学校高学年のママ・パパ向け】
(1) 子どものお手伝い 付箋とタイマーで習慣化を促す
(2) 子が約束したお手伝いをしない 親の声かけ注意点
(3) 自然を通しての「探求」で高学年の視野を広げる ←今回はココ
(4) 高学年の読書感想文3つのコツで「自分らしく」書く

 24年間にわたって筑波大学付属小学校に勤務した後、早稲田大学教授として教職を目指す大学生に理科の面白さや自然の奥深さを伝えてきた露木さん。「高学年であれば、さらに探求を深めて世界の見え方を変えていくことができるはず」と話します。

 この「センス・オブ・ワンダー」の重要性については米国の海洋・環境学者レイチェル・カーソンが半世紀前に提唱をしました。自然を通して何かに出会い、それに対して強く感じるとき、その先に知識が身に付き、精神が育まれます。高学年の子どもに「センス・オブ・ワンダー」が備わることで、生涯、好奇心旺盛に生きていく基本姿勢が身についたり、中学受験をするにしても、実体験でベースになる概念ができることで理解が進むだけでなく、さらに深まる学びにつながったりします。

高学年は、「発見」や「気づき」から「探求」へ

 身近な自然の中にある発見が視野を広げ、世界を変えるという例として露木さんは自身の体験を挙げます。

 それは、地域の生態系を記録する文献を作るため、昆虫調査をしていたときのこと。夜の公園に出向いた露木さんは、草に止まって寝ているチョウを見つけました。そのことをある人に伝えると、「チョウは寝るとき、触角を翅(はね)の中にしまって寝る」と教えられ、それから意識的に寝ているチョウを探すようになったそうです。

 「あえて探してみると触角を翅の中に入れているチョウはなかなか見つかりませんでしたが、あるとき翅に触角をしまったチョウを発見して、とても感動しました。さらに、継続的にチョウの生態を見ていたことによって、チョウが種類によって寝る場所を決めているらしいことにも気づくことができたのです。これまで見えていた世界が、少し変わって見えた瞬間でした」(露木さん)

 大事なのは、このように一つの発見や気づきからさらに視野を広げ、探求を深めていくこと。それは高学年になれば十分にできることだと露木さんは言います。

 「低学年も『発見』や『気づき』まではできますが、なかなか『探求』にまでは踏み出すことができません。それができるのは、知恵がつき、思考力や論理力が発達し始めた高学年ならでは。親が子どもの新しい発見を一緒に楽しみ、学ぶ喜びをともに味わうとともに、適切にサポートすると、子どもの探求はより深まっていきます」

 次のページから、高学年向けのフィールドワークに関して、親の関わり方のヒントを紹介します。

チョウの睡眠(写真はいずれも露木さん提供)
チョウの睡眠(写真はいずれも露木さん提供)