夏休みが始まり、多くのお子さんたちは夏の日々を楽しんでいるころでしょう。一方、夏休みは子どもたちの間で「いじめ」がエスカレートしやすく、夏休み明けを思い、気持ちが重くなる子どもが増える季節でもあるのです。自身、小学5年生の男の子の母親でもあり、日本テレビで、数々のいじめの現場を直接取材し、6月に『いじめで死なせない~子どもの命を救う大人の気づきと言葉』を出版した岸田雪子さんに、現代のいじめの特徴や防ぎ方、対策などを詳しく伺いました。

   岸田さんのお話は同じ親としても目から鱗が落ちる内容ばかり。「現代の小学校のいじめ【親の思い違い】その1」から「その3」を、ポイントとしてご紹介します。

【年齢別特集 小学校高学年のママ・パパ向け】
(1) 自分の子が「あんなやつ、死ねばいい」と言ったら? ←今回はココ
(2) いじめSOS 最も信じるべきは「親の勘」
(3) 小学校「体操着の下に肌着ダメ!」おかしい?納得?
(4) 女子が「ブラを買って」と言えない原因はママの言葉

子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

小学校高学年のいじめの主流は、「軽い」と思われがちな言葉によるいじめ

 長きにわたり、子どものいじめの現場を取材してきた岸田さんに、最近のいじめのトレンドから教えてもらいました。

 「最も特徴的なのはSNS上などでのいじめ、つまり“ネットいじめ”です。しかし、その主戦場は中学校・高校です。小学校高学年のうちはまだスマホを持つお子さんも少ないでしょうから、むしろ『軽い』と思われがちな、悪口や仲間外れなどのいじめが主流だと思います」

 しかも、一昔前のいじめとは様相がかなり違うのが、現代のいじめです。

 「昔はいじめと言うと、学校でも目立っている、いわゆる“いじめっ子”の存在を思い浮かべる方も多いかもしれません。周りの子どもには『あの子にやられると怖い』という思いが共有されており、先生も『あの子は気を付けて見てあげなければ』と意識していたものですが、今のいじめは、誰もがいじめっ子にもいじめられっ子にもなってしまうのが特徴です。つまり、『どういう子がいじめられやすい』『どういう子がいじめやすい』ということではなく、みんながいじめの当事者なのだという意識で子どもたちの世界を見ることが必要になっています」

 いじめる側に「あまり悪気がない」というのも特徴です。

 「特に暴力を伴わないいじめ、例えば、無視、陰口、仲間外れなどがそうです。少し気に入らない子がいると“仲間の輪”から阻害してしまうことがあります。こうした行為は、殴る、蹴るなど、目に見える暴力に比べて、親や先生から、割と些細なことと捉えられてしまいがちです」

 「いじめる側の子どもが『●●ちゃんにこんなことをされたので、やり返しただけです。●●ちゃんが悪いんです』言うのを聞いて、『なるほど。●●ちゃんにも悪いところがあったんだね』と大人が見逃してしまうこともあるかもしれません。でも、実はそれが“いじめの芽”になるかもしれないのです。その芽を、初期の段階で潰していってあげることが大切です。『理由があればいじめても良い、ということにはならないのだ』と子どもたちに伝えていくことが、いじめる子も、いじめられる子も生まないための対策の第一歩になると思います」

 小学校高学年にもなれば、子どもたちの体も大きくなり、知恵も付いてきて、友達や先生を相手にひどい言葉を使って話すこともあります。もし自分の子のそんな光景を目撃したとき、親はどう振る舞えばいいのでしょう。

◆現代の小学校のいじめ【親の思い違い】その1
 × いじめる側に悪気はあって当たり前
 → いくら高学年になったとはいえ、まだまだ未熟な子どもたち。いじめる側に悪気がなく、最初は軽い言葉のやり取りから始まることも少なくない。
「小学校のうちは、むしろ『軽い』と思われがちな、悪口や仲間外れなどのいじめが主流だと思います」(岸田雪子さん)
「小学校のうちは、むしろ『軽い』と思われがちな、悪口や仲間外れなどのいじめが主流だと思います」(岸田雪子さん)
<次のページからの内容>
● はなから否定するのではなく、「この子は何でこんな言動をするのだろう」と考える
● 自分の子が「あんなやつ、死ねばいい」と言ったら……
● 共働き親が注意すべきこと
● 「いじめ」と「仲が良いからこその衝突」の見極め方
● トラブル発生時、相手の親御さんとはどう関わる?