将来の選択肢の一つとして漠然と海外大学への進学を視野に入れている家庭も多いでしょう。どうすれば、子どもの興味を無理なく海外に向けることができるのでしょうか。また、子どもが「海外で学びたい!」と言ったとき、親はどのようにサポートすべきなのでしょうか。国内の進学校から米国・ニューヨーク州の名門コロンビア大学に進学し、海外進学を希望する高校生を無償でサポートする「atelier basi」を運営する現役大学生の田中祐太朗さんに話を聞きました。

【年齢別記事 小学校高学年のママ・パパ向け】
(1) 海外の大学への進学を視野に 留学資金はどう準備?
(2) 現役留学生・田中祐太朗さんに聞く海外大進学リアル ←今回はココ
(3) 子のレジリエンス高める ネガティブ沼からの脱出法

興味の引き出しを増やして、留学の目的を具体化

日経xwoman DUAL(以下、略) 田中祐太朗さんご自身は、いつごろから海外大学進学に向けて動き出したのですか。

田中祐太朗さん(以下、田中) 医学系の研究をしていた父の影響で医学に興味を持っていたので、高校1年生ごろまでは国内大学の医学部へ進学を考えていました。しかし、「ここに進学したい」と思える大学が見つからなかったのです。幼少期を英国で過ごしており、海外に対する心の障壁が低かったこともあり、動画やブログで海外の大学の情報を収集し始めたのが高校2年生の後半です。そのなかで、多様な仲間と切磋琢磨(せっさたくま)しながら各分野のプロフェッショナルのもとで学べる環境に魅力を感じたこと、学んでいる学生を見て「かっこいい」「自分もそうなりたい」と思えたことから、海外大学進学に向けて動き始めました。

コロンビア大学理工学部2年生の田中祐太朗さん
コロンビア大学理工学部2年生の田中祐太朗さん

―― 憧れがモチベーションになったのですね。幼いころから親御さんの背中を見てきたことの影響は感じますか。

田中 英国にいたころ、父は大学の研究機関にいて、よく私を仕事場に連れて行ってくれました。一般の企業にはない環境だと思いますが、子どもの価値観や興味はそうしたところから醸成されていきますよね。私のように親の仕事と自分の興味が一致するとは限りませんが、「興味の入り口」を示すという意味では、親の背中はよいきっかけになるのではないでしょうか。

 海外大学進学へのモチベーションは、自分のやりたい研究ができそうであることも大事な要素です。せっかく海外に進学するなら、「何を学びたいか」が一番重要だと思います。そして学生のほとんどはその国の人なので、米国なり英国なり、その国の風土や雰囲気も考慮して「何を、どんなふうに学びたいか」を考えるといいでしょう。10代後半から20代前半の大切な時期を過ごす場所ですから、憧れを持って、楽しんでいけることがとても大切ではないでしょうか。

―― 自分の興味の対象を見つけられると、自然と進学先も絞り込まれていきますね。

田中 そうですね。私は、今は大学では主専攻で応用数学を、副専攻として哲学を学んでいます。もともとあった医学への興味と、中学生のころから好きだった数学、プログラミングなどへの興味が溶け合って、大学生の今では少しずつやりたいことが明確になっていきました。

 中学生から高校生になる数年間は、やりたいことや好きなものが次々に移り変わる時期。いろいろなものに触れて、自分の興味関心が何に向いているのか、何を学んでいきたいのか、その期間に見極められるといいですね。漫然と「海外大に行きたい」というだけだと壁にぶつかるかもしれませんが、明確な目的意識を持って行動できれば、世界のどこに行っても実りある学生生活が送れると思います。

―― 海外大への進学を希望していると親御さんに伝えたとき、どういう反応でしたか。また、米国の大学の学費は高い、と一般的に言われますが、留学先を決めるにあたってお金の面ではどのような工夫をしたのでしょうか

コロンビア大学の様子(写真はいずれも田中さん提供)
コロンビア大学の様子(写真はいずれも田中さん提供)