学校が再開して1カ月が過ぎました。首都圏では新型コロナウイルスの第2波が警戒されています。今後、子どもたちの学びや学校生活はどのように変わっていくのでしょうか? 中学受験を控える高学年はどのようにこの夏を乗り切ればいいのでしょうか? 千葉大学教育学部付属中学校校長で、教育方法学・授業実践開発を専門とする同大学教育学部教授の藤川大祐さんに聞きました。

【年齢別特集 小学校高学年のママ・パパ向け】
(1) 小学生のストレスは例年以上 短縮夏休みどう過ごす
(2) 進む学校のICT化 高学年が家庭で取り組むべきは ←今回はココ
(3) トゲトゲの第⼆次反抗期 子との向き合い方と心構え
(4) ファーストブラ つけるタイミングと親の関わり方

コロナ禍で浮き彫りになった教育現場でのICT化の遅れ

 新型コロナウイルスの感染拡大は、教育現場でオンライン学習を進めていくきっかけになりました。休校中にオンライン学習を取り入れた学校では、具体的にどのように活用していたのでしょうか。

 千葉大学教育学部付属小学校では、「Microsoft Teams」(以下、Teams)を用いたオンライン授業を進めました。Teamsは教師と子どもたちが1つのチームを作ることで、その中でチャットやファイル共有、ビデオ通話、オンラインの共同作業などができるアプリです。パソコンを持っていなくてもスマホやタブレットから同様の操作ができます。同校では一斉休校が始まった前日に児童全員分のTeamsアカウントを申請。休校初日からTeamsを活用したオンライン教育を試験的に導入しました。Teamsを活用した授業とは具体的にどんなものだったのでしょうか。

 「体育の授業では、教師と子どもたちは互いの顔が見え、声が聞こえる状態で、自宅の部屋の中でできる運動を行いました。運動を通じて互いにコミュニケーションを取るという経験ができました。非同期型で行われた理科の観察の授業では、教師があらかじめ用意したワークシートをTeamsに共有し、子どもたちがそれに目を通したうえで教師が作成した動画を視聴することで、より理解を深めることができました」(同小学校教諭でICTを担当する小池翔太さん)。

 疑問や発見があれば子どもたちがTeamsに自由にチャットをし、それを教師が読んで次の動画に反映させました。毎日の朝の会ではテレビ会議でつなぐだけでなく、チャット機能を使って「地名しりとり」を楽しむなど、子ども同士がコミュニケーションを深めることができました。

 休校中もオンライン授業を取り入れていた学校では、再開後も子どもたちがスムーズに学校生活に戻ることができるうえ、授業の遅れもほとんどないので例年と同様に長い夏休みが確保できています。ある学校では、不登校気味だった子が匿名でオンライン授業に参加できるようになった効果も見られたそうです。しかし、休校中にオンライン学習を取り入れた学校は一部に限られ、多くの学校ではプリントが配られたり、ドリルを進めたりといった自主学習にとどまりました。

 「全国の公立学校にはパソコンが配備されてはいるものの、教員も子どももICT(情報通信技術)の活用に慣れておらず、日常の授業で活用できる状況にはありません。オンライン授業は必ずしも同期型で行う必要はなく、授業動画を視聴してネットで課題を提出するといったやり方でもいいと思います。今後、コロナ流行の第2・第3波が予想される中で、補助的な手段としていつでもオンライン学習をできる環境を整えておく必要性を誰もが実感したのではないでしょうか」と藤川さんは話します。

 文部科学省は児童生徒に1人1台の端末と高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備するGIGAスクール構想を掲げています。当初は2023年度の達成を目指していましたが、新型コロナウイルス対応としてまとめた緊急経済対策に前倒しが盛り込まれました。このように教育現場でICT化が進むなか、家庭では何に取り組むといいでしょうか