思春期の子どもたちは第二次性徴という自分の体の変化に直面し、心の中では親から自立しようとしています。いわゆる「第二次反抗期」に備え、親はどんな準備をしたらよいのでしょうか。思春期を乗り越える親子関係や、子どもの気持ちを分かってあげる方法、そしてこの時期のいじめへの対処法について、前回に引き続きスクールカウンセラーとして多くの親子と向き合ってきた、東京成徳大学大学院心理学研究科教授の田村節子先生にお聞きしました。

【年齢別特集 小学校高学年のママ・パパ向け】
(1) 思春期の「うるせぇ」を翻訳機にかけてみると?
(2) 週に1度のトークタイムで反抗期の本音を引き出す ←今回はココ
(3) 高学年4割以上がスマホ所持 親子間ルールの作り方
(4) ネットの世界 子どもが自画撮り送ってしまう理由

子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

思春期に親子の力関係は逆転する

 ついこの間までは、衣食住のお世話はもちろん、「忘れ物はない?」「宿題やった?」と色々な面倒を見て、「今度のお休みは動物園へ行ってから、外食しよう」と何でも親と一緒だったわが子。それなのに思春期に入るとむっつりとして話さなくなったり、「ちゃんと勉強しているの?」と言おうものなら「うるせぇ!」とすごまれてしまったりしていませんか? パパが娘から疎まれてさみしい思いをする時期でもあります。「うちの子に限ってそんなことはない」と思っていたのに、と落ち込んでいませんか?

 そんな方はぜひ、親子のパワー関係を見直してみてください。下の図はスクールカウンセリングの経験から、私が発見した「親と子が幸せになるXとYの法則」の中の「Xのグラフ」です。縦軸は力の大きさ、横軸は子どもの年齢です。赤い色の線は親の力を示しています。

出典:『子どもにクソババァと言われたら』(田村節子・高野 優著/教育出版)
出典:『子どもにクソババァと言われたら』(田村節子・高野 優著/教育出版)

 子どもの年齢が小さいときほど、親は世話をしたり、気を配ったりして「力」を使うので、一番力が大きいところから線が始まっています。青い線は子どもの力です。赤ちゃんのときはすべて親に委ねているので、ゼロ時点からスタートします。

 子どもが成長するにつれて親が子どもに使う力は減っていきます。反対に子どもは自分のことは自分でできるようになるので、子どもの力は右上がりに増えていきます。これは自然な成長ですね。

わが子との関係はどうなっているか振り返ってみよう

 図の中に、親と子の力が交わる点がありますね。ここがいわゆる思春期、「第二次反抗期」です。子どもはこのとき、「自立=自分で考えて、自分で行動して、自分で責任を取る」に向かっていこうとしています。親はまだ子どもに力を及ぼそうとするので、クロスする時点でバトルになることがあります。そのやり取りを乗り越えることで、子どもは自信を持ち、自立に向かっていきます。バトルの激しさは家庭それぞれです。親がバトルに気づかないほど穏やかな場合や、バトルにならないこともあります。

 親と子の力関係は、このようにX型になっていくのが理想形です。バトルが起きたら、親は「よしよし、わが子は順調に自立に向かっているぞ」と手も口もなるべく出さずに見守ってやり、いざというときに助けの手を差し伸べてやればよいのです。親がそのような気持ちで子どもに接していれば、思春期はうまく乗り越えられます。

 ところが、あることが原因で、グラフがX型にならない親子もいます。グラフはどのような形になるでしょうか。

<次のページからの内容>
● 親が変わらないと、子どもは圧力を感じる
● 「過保護」「過干渉」「期待のし過ぎ」「厳し過ぎ」だとYのグラフになる
● 軌道修正に必要なのは子どもへの「諦め」
● あまり話さなくなったときこそ「だんらん」を見直そう
● 向かい合って子どもの話を聴いてみよう
● 思春期のいじめは、社会に出てから心身への影響が出る恐れがある
● 学校に相談して現場を押さえてもらう