新型コロナウイルスの感染拡大に伴う小学校の休校。前代未聞の長期休校によって、不安やストレスなど、小学生の心理面にさまざまな負の影響が出るのではないかと推測されます。中でも気になるのは、コロナ関連のいじめなどが起きないか。感染拡大を防ぐために、人と人との距離を置くことが推奨されていますが、無意識のうちに子どもに誤った伝え方をしていないでしょうか。法政大学大学院人文科学研究科教授の渡辺弥生さんに、予防のために親が家で取り組めることについて聞きました。

【年齢別特集 小学校高学年のママ・パパ向け】
(1) コロナ後 従来のキャリア教育は過去のものに?
(2) 家庭に探究習慣を 親は「ばかばかしさ」こそ大切に
(3) コロナ 高学年の「心の免疫力」を親はどう育てる
(4) 学校でのコロナいじめが心配 親にできる5つのこと ←今回はココ

自分が恐怖を感じているからこそ攻撃してしまう

 新型コロナウイルスに関わる差別は、大人の世界でも取り組むべき課題として認識されていますが、学校内でも似たような問題が起きることが想像できます。

 法政大学大学院人文科学研究科教授の渡辺弥生さんは、そうした事態を予防するために静岡大学教授の小林朋子さんや静岡の劇団SPACの有志とボランティアで動画「健康戦士コロタイジャー ~おもいやりピンク編」を作りました。ソーシャルスキルトレーニングや思いやりについてのエビデンスを土台に、渡辺さんは企画とシナリオを担当しました。

 「人間には、『自分は壊れたくない』という意識があります。危機を感じる意識が高まると、『Fight or Flight』と呼ばれる『攻撃的になるか』『逃げるか』という動物的な本能が出てきます。また、自律神経が乱れ大きなストレスになります。そのため平時のような判断力が働かなくなります。

 自分が恐怖を感じているからこそ、『おまえはあっちへいけ』などのいじわるなことを言ってしまったり、自分は安全なほうにいると思いたくてスケープゴートをつくったりします。攻撃することは、本来自分にリスクがかかること。自分が怖くなければわざわざ攻撃にいく必要はありません。自分自身にある程度満足して、それなりに自分に余裕があれば、人を攻撃するほうの子にはなりにくいです」

 長期間にわたる休校は、多くの子どもたちを余裕のない状況に追い詰めている可能性があります。「普段からストレスがないわけではありません。ただ高学年になるとテレビやLINEなどで情報を得て、『命に関わることが日本や世界で毎日起きている』と感じ、さらに勉強の遅れが気になったり、友達に会えなかったりすることでストレスは増えていると思います。そういう状況では不安、心配、恐れなどネガティブな感情が大きくなりやすいです。

 子どもは、自分をモニターする力や自分をコントロールする力(『メタ認知』)は大人よりも弱いです。もちろん大人でも難しいのですが、自分を振り返る力が弱いと、自分ではいいことをしていると思って、相手を傷つけてしまうかもしれません」。メタ認知についても、渡辺さんらは動画「メタにんちイエロー編」を作成しました。

 このような状況下では、親が家庭でいじめ予防策を伝える役割を果たすことが大切だと渡辺さんはアドバイスします。感染予防対策について子どもに念入りに伝えるケースは多くても、心配のあまり、そちらだけに重きが置かれてしまうこともあり得ます。「感染予防のために人と人とが離れることは大切ですが、では心の距離はどうしたらいいか、などの大事なところは、親が工夫しないと、子どもには伝わりにくいでしょう」

 自分の子どもが誰かを攻撃しないために、また反対に子どもが困った状態に陥ったときに高学年の親ができることはあるのでしょうか。

いじめが起きないために 親にできる5つのこと (1)親は無意識に自分が発するメッセージに敏感になる (2)「悪いのは○○○」と親がしっかり認識する (3)良いモデルを与える ニュースを見るときはチャンス! (4)悪いモデルも見せる 見せっぱなしはNG (5)親は今こそ「応答性」と「共感性」を忘れない