新型コロナウイルスの感染拡大に伴う小学校の休校。前代未聞の長期休校を経験した小学生の心理面に、不安やストレスなどさまざまな負の影響が出ているのではないかと推測されます。徐々に学校が再開する段階にさしかかる今、高学年の子どもに対して、親ができることはあるのでしょうか。思春期の心理に詳しい、法政大学大学院人文科学研究科教授の渡辺弥生さんは、「親子が一緒に過ごす時間が長かったからこそ、見える変化があります」とアドバイスします。子どもの「心の免疫力」をつける方法を聞きました。

【年齢別特集 小学校高学年のママ・パパ向け】
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(3) コロナ 高学年の「心の免疫力」を親はどう育てる ←今回はココ
(4) 学校でのコロナいじめが心配 親にできる5つのこと

子どもは親の雰囲気に大きく影響される

 新型コロナウイルスによる子どもの休校や外出自粛、在宅勤務などが続き、疲れたり、不安を抱えたりしている親は多いでしょう。「情報をたくさん持っていて、これまでさまざまな経験をしてきた大人でもいろいろな葛藤があり難しい時期だと思います。そんな中、大人の不穏な雰囲気を感じ取りながら、友達と遊びたい、学校へ行きたいなどの欲求を抑え込んできた子どもたちはさらにつらいと思います」。法政大学大学院人文科学研究科教授の渡辺弥生さんは、そう話します。

 「小4ぐらいになると、友達の存在に重きが置かれるようになるため、友達と会えない、対面して話せないのはつらいです。また、在宅勤務などをしている親とずっと一緒に過ごしている場合、楽しければいいですが、理不尽に叱られることが増えると、それもストレスになっていると思います」

 親も疲れが出ている時期です。「ウイルスへの不安や仕事がうまく進まないなどで親自身もストレス状態になっていると思いますが、子どもは親の雰囲気に大きく影響されるもの。大人がそわそわしたり、イライラしたりしていると、一緒にいる子どもは影響を受けます」

 「子どもが転んだときに『そんなの大丈夫よ』とニコニコしながら言う親だと、子どもはパンパンと膝を払って起き上がれますが、『大変、大丈夫? けがしてない?』と心配顔で言うと、子どもは泣き出します。これを『社会的参照』と呼びますが、判断力が未熟な子どもは、大人が不安でどうしようとなっている表情を見て、何か大変なことが起きていると判断するわけです」

 さらに、休校で親と接している時間が長くなっています。「親が適度に冷静、前向きで、息抜きも適宜できているような家庭では、子どもの感じるストレスはそれほど大きくないかもしれません。学校で長い時間を過ごしている普段と異なって、それぞれの家庭の特徴が子どもに出ると思います」

 とはいえ、親にとっても初めての経験で、親の姿勢が大事と言われても、余裕がない場合は少なくありません。「ウイルスに関して正しい情報を理解しているはずの大人が右往左往して余裕がない状況であれば、知識や情報が少なく、言葉も未熟で感情もこれから発達していく子どもに、正しい姿勢や冷静さを求めるのは無理な要求だと理解したほうがいいと思います」

 では、それを踏まえてどうしたらいいのでしょうか。「学校再開で起きるかもしれないネガティブなことを恐れるよりも、今からでもできることに取り組んでほしい」と話す渡辺さんに、子どもの「心の免疫力」をつけるために親が家庭でできることなどについて聞きました。

子どもの「心の免疫力」をつけよう  高学年の親が知っておきたい 6つのポイント  □大人の感情は子どもに影響しやすい  □親自身が「自分をモニター」できているか  □必要なのは「ほどほど、まあまあの自尊心」→「3つの感」が大切  □親は期待するスケールが大きすぎないか確認  □「高学年の心」は親が思うより複雑  □勉強苦手の子ほど不安を感じているかも