新型コロナウイルスの影響で休校や在宅勤務などが続き、1週間先の自分の生活や仕事が読めないなど、かつて経験したことのない日々が続いています。オルタナティブスクールの校長を務め、以前から探究する学びの重要さを訴えてきた市川力さんは、見方を変えれば「コロナ・ショック=探究心を育むとき」だと説明。さらに今回のテーマである、「小学生のキャリア教育」にも、新しい視点が必要だと指摘します。

【年齢別特集 小学校高学年のママ・パパ向け】
(1) コロナ後 これまでの逆算型キャリア教育が変わる? ←今回はココ
(2) 家庭に探究習慣を 親は「ばかばかしさ」こそ大切に
(3) コロナ 高学年の「心の免疫力」を親はどう育てる
(4) 学校でのコロナいじめが心配 親にできる5つのこと

先を予測できない現状が「探究する学び」の必要性を示している

 「新型コロナウイルス感染拡大の影響で、長期間の休校が続いたり、大学の授業などがオンラインになったりしました。在宅勤務が続いて、会社にしばらく行っていない、という大人も少なくないでしょう。皆さんがすでに実感している通り、働き方も含めてさまざまな分野で予測のつかないことが数々起こっています」と市川力さん(一般社団法人みつかる+わかる代表理事)。

 市川さんは、2017年春まで校長を務めたオルタナティブスクール「東京コミュニティスクール」などで、小学生を対象に探究力を育む教育を研究・実践してきました。「私自身は15年ぐらい前から『探究する学び』に取り組んできましたが、新学習指導要領に盛り込まれ、探究という言葉は、近年ちょっとした注目を集めています。そんな中、今回の新型コロナウイルスによって1週間先すら読めない世の中となり、この状況をそれぞれが乗り越え、生き抜くために、探究する力が必要になっています。なぜ探究力が必要なのか、現状が物語っています」

 同時に、新型コロナウイルスの問題は、キャリア教育に対する考え方にも大きな影響を与えたと市川さんは指摘します。「将来を見据えて長期的に考え、学校や会社、職業などのゴールから逆算して、最短かつ最適な道筋を提示するのが、ここ数十年ほどの一般的なキャリア教育の捉え方でした。これまでは先がある程度予測できたので、『逆算のキャリア教育』が通用しました。事前に準備することが可能な時代はそれでよかったのです。

 でも人類の長い歴史で見れば、感染症がなかった時代もなければ、不況がなかった時代もありません。事前に準備して⼈⽣のキャリアを築く、という時代のほうが実は特別だったという考え方もできます」

 だからといって、未来は考えないでいいという短絡的なメッセージも違うと市川さんは指摘します。では、どうしたらいいのでしょうか。考え方を一変させ、今を探究心を育むときと捉え、新しいキャリア観を親も子も持つきっかけにしてほしい――市川さんはそうアドバイスします。

コロナ・ショックを無駄にしない考え方のポイント ・新型コロナウイルスの問題は、親も子も「自分事」→チャンス・自分にとって心地よくない状況を解消する=これこそ探究心・キャリア教育は「逆算」→「探究のわだち」へ