学びが多様化し、教育の選択肢は増えています。とはいえ「新しい学び」の機会を子どもに提案したいと思っても、親自身になじみがなければ、検討することさえ難しいもの。本記事では、文部科学省が日本への導入を推進している「国際バカロレア(IB)」について、どのような学びで、実際にどんな進路があるのかなどについて聞きました。「IB=英語が得意な子向け」というイメージがありますが、本当なのでしょうか。後日公開の後編では、海外大学進学の資格になる、高校向けのディプロマプログラムについて詳しく紹介します。

【年齢別記事 小学校高学年のママ・パパ向け】
(1) 国際バカロレア 「英語が得意な子向け」という誤解 ←今回はココ
(2) 海外大進学だけじゃない 生涯学習者目指すバカロレア

公立や国立で導入されている学校も

 「国際バカロレア(IB)」と聞くと、「インターナショナルスクール生向け」「帰国生向け」というイメージを持つ人は少なくないでしょう。しかし、文部科学省が2022年度までに国際バカロレア認定校等を200校以上にするという目標を掲げたこともあり、国内認定校・候補校は175校(2022年3月31日時点)に上り、以前よりは身近な存在になりつつあります。公立や国立で導入する学校も少しずつ増え、例えば、高知県香美市の香美市立大宮小学校が初等教育プログラム(PYP)の認定校になったことも話題になりました。

 「バカロレアの学びを一言で説明すると、探究型の学びです」。そう話すのは、IBのPYP教員研修を修了した経験もある国際教育評論家の村田学さん。IBは、外交官など国際転勤族の子どものために開発された世界共通の教育プログラムで、スイス・ジュネーブに本部がある国際バカロレア機構が提供しています。

 「文科省による新学習指導要領の改訂ポイントの一つが『探究力』でした。探究学習を日本に広げるという大きな流れがあって、そのために文科省がIBをスパイス的に取り入れたとも言われています」と村田さん。

 IBは、3-12歳向けの初等教育プログラム(PYP)、11-16歳向けの中等教育プログラム (MYP)、16-19歳向けのディプロマプログラム(DP)があります。DPで一定の成績を修めると、国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)を得られます。

 3-12 歳向けのPYPと11-16歳向けのMYPはどの言語でも提供可能とされています。一方で、16-19歳向けのDPは、「原則として、英語、フランス語またはスペイン語で実施」とされています。ただ、日本では、英語のみのDPだけでなく、科目の一部を日本語でも実施できるデュアルランゲージ・ディプロマプログラム「日本語DP」が開発・導入されています(DPについては、後編でも詳しく説明します)。

 「探究的な学び」に関心がある人にとっては、気になるプログラムかもしれません。「IBは自分で『どうして』『なぜ』と問いを作って、問いに対して要素を分解して、複数の仮説を立てて、実際にやってみて、フィードバックして、それを繰り返して答えを導くプロセスを習得する学びと言えます。

 私も小5の子がいますが、自分たちが教育を受けた時代と今では産業構造はがらりと変わっています。今10歳の小学生が20歳になったときには、間違いなく、自分で問いを立てて、仮説を考えて、ソリューションを提供できるような力が求められるでしょう。それができれば、社会課題を解決して社会に貢献もでき、自分も食べていけると考えられます。ルーティンの学びではなく、社会に出てから、日本だけでなく世界でも役立つスキルを訓練できるのがIBの学びのメリットと言えます」(村田さん)

 では例えば、日本語ネーティブの小学生がいる家庭で、学びの選択肢の一つとしてIBに興味を持った場合に、今からどんな道筋があり得るのでしょうか。「以前と比較すると、IBの学びに入るルートは多様化しています」と村田さん。

 どのような選択肢があるのか、英語力はどれくらい必要なのかなどを、村田さんと、IBコーディネーターとして国立と公立、2つの高校への日本語DP導入に携わった高校教員の熊谷優一さんに聞いていきます。

◆この記事で読める内容
・「バカロレア的学び」とはどんなもの?
・学ぶために身に付けたい5つのスキルとは
・中学から? 高校から? 選択肢は
・「純ジャパ」でも大丈夫? 必要な英語力は
など