子どもが小学校高学年にもなると、親は「いちいち言わなくても、自分のことは自分でやれるようになってほしい」と思ってしまうもの。でも、目の前の子どもを見ていると、そんなことできるようには見えない……。果たして、勉強や習い事、その他もろもろを自分ですべて管理し、スケジュールを立てて、その通りに生活する、そんな子どもに育てることは可能なのでしょうか?

中学受験専門のプロ講師として、日経DUALの書籍『中学受験 基本のキ!』の共著者でもある小川大介さんは、この問いに「可能です」と答えます。どうすれば勉強面でも生活面でも自立させることができるのか、小川さんに聞きました。

【年齢別特集 小学校高学年ママ・パパ向け】
(1) 子どもを“家事戦力化”することで育む、気付く力
(2) 家事の報酬は必要? 子どもに任せるコツと声掛け
(3) 子どもが自立して学び、生活するスケジューリング術 ←今回はココ
(4) 中学受験や人生に役立つ予定の立て方・過ごし方

子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

「自立=手がかからない」ではない

 当たり前ですが、大人は一人暮らしをしながら、仕事もすることができます。それは「~しなければならない」という理屈で動くことができる年齢だからです。仕事をしなければ食べていけないし、自分で家事をしなければ快適に暮らすことはできない。そのことが分かっているから自分で動くことができるわけですが、子どもの場合は高校生以降にならないと、「理屈で動く」のはなかなか難しいのです。

 親が、高学年の子どもに対して「私は仕事をしなければならない。だからあなたも自分のことは自分でするのが当然」という気持ちでやらせようとすると、だいたい失敗するのはこのためです。「目標を決めた以上は当然やるべき」というルールで縛って動かそうとするのは、大人に対するアプローチ。子どもにはそれを適用しない=親自身が置かれている状況を子どもに当てはめない。これが基本です。まずは、子どもの行動原理を理解しましょう。

 子どもが自分から動けるのは、それが楽しいときや、朝起きるなどの当たり前だと思って疑問を持たないときの二つです。ですから、いかに子どもに「やってよかった」という思いを持たせてあげられるか、「当たり前」だと思えることを増やせるかが重要です。これができれば、子どもは自分から動いてくれるようになります。

 一つ注意してもらいたいのは、もし子どもが自分のやるべきことを自分で理解し、予定を立てて自分でできるようになったとき、それでも子どもにかけるエネルギーは保ってあげてほしいのです。ここで言うエネルギーとは物理的な手間などではなく、子どものことを思う気持ちのことです。

 子どもに手がかからなくなると、親が子どもにやってあげることは少なくなります。でも、仕事中にふと子どものことを思ったり、一人で頑張っている子どもに声は掛けなくとも見守ってあげたり。そうした思いは、親が思っている以上に子どもに伝わるものです。この“心のエネルギー”を落としてしまうと、子どもの自立は一気に止まってしまうのです。

 例えば、子どもが自分で布団を片づけたとき、ランドセルの準備をしたとき、その一つひとつに対して、「すごいね!」と褒める。すると、子どもは「自分に関心を持ってくれている」「愛されている」「信頼されている」と思え、また頑張れます。

 1回できたからといって、それを「当たり前」だと思ってはいけません。昨日できたことでも、今日もやっていたらまた褒める。勝手に褒めるハードルを上げないことです。当たり前のようにできても「やっぱり、それはすごいよね」と、何回でも、何年でも伝え続ける。子どもを自立させようと思うなら、「手を離しても目は離さない」ことが肝心なのです。

 子どもの接し方の基本は、「子育て3原則」にあります。

<次のページからの内容>

● 口出しは子どものやろうとしている芽を潰している
● 親子間のバトルの原因は親の事前確認不足
● 親は見通しを示してあげる
● 子どもへの関わりに行動心理学を使う
● 能力の拾い出しが自立への第一歩
● 子どもが「できるかも」と思うことをやらせる
● かかる時間を知ることがスケジューリングの入り口
● PDCAで大事なのはC
● 子どもの成長は複利計算
● 子どもの外に正解を求めない