子どもが小学校高学年になると、親も職場でより責任ある立場になっていることが多いでしょう。もっと仕事に打ち込みたいし、子どもにも自分のことは自分でできるようになってほしい。でも実際は、早く帰って子どもにごはんを食べさせなくてはいけないし、家事もたまってしまう……。そんなジレンマに悩んでいるパパやママも多いのではないでしょうか。そこで、今回は「子どもを家事戦力化する」がテーマです。

兼業主夫で「秘密結社 主夫の友」広報担当の杉山ジョージさんと、日本全国で年間3000人以上のパパ&ママ、プレパパ&プレママに子育てと仕事の両立について講演しているNPO法人ファザーリング・ジャパン(FJ)理事の林田香織さんに話を聞きました。

【年齢別特集 小学校高学年ママ・パパ向け】
(1) 子どもを“家事戦力化”することで育む、気付く力 ←今回はココ
(2) 家事の報酬は必要? 子どもに任せるコツと声掛け
(3) 子どもが自立して学び、生活するスケジューリング術
(4) 中学受験や人生に役立つ予定の立て方・過ごし方

子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

家事は自分や家族のためにする仕事

 小学校高学年は思春期の入口。なかなか親の言うことに耳を傾けてくれなくなることも増えてきます。「自分のことは自分でできるようになってほしい」と思いながらも、「子どもを家事の戦力にするといっても、やらせるのは大変そう」と感じてちゅうちょすることも。

 兼業主夫で「秘密結社 主夫の友」広報担当の杉山ジョージさんは、「高学年であれば、家事をすることによってその意義が分かる」と話します。

 「家事が生活の一部だと認識できるようになるのは、ちょうど高学年になる頃、10歳くらいの年齢といわれています。小学校5、6年生になると家庭科で調理実習がありますが、実際の生活は授業のように『時間を決めてハイ終わり』ではなく、『これをするとこうなる』『これをしなかったからこうなる』という、一連の流れの中にありますよね。そこを理解させることが、次につながると思います」

 「家事は、自分たちが気持ちよく、楽しく生活するためにすること」。誰かがやってくれることではなく、「自分ごと」として捉える。家事をすることで、そういうことが分かるようになるということです。

 一方、FJ理事の林田香織さんは、「家族という『チーム』の一員として、子どもも家事を担うのは当たり前のこと」と話します。

 「家事をすることは、安心・安全に過ごせる環境を自分自身でつくるということです。小学校では、5年生から家庭科を習います。その目的は、毎日の生活を大切にし、よりよくするためにはどうすればいいかを学ぶこと。

 5年生では『自分は何ができるか?』を考え、6年生ではそれをさらに発展させて、『家族や地域も含めて自分以外の人も心地よく過ごすために、どんな工夫ができるか?』ということを考えていきます。家庭の中では、それを実践する場を整えていくことが大切です」

 自分と一緒に暮らす親やきょうだいが、健康で気持ちよく生活するための環境を整える。家事は単なるお手伝いではなく、そのための「家庭の仕事」であり、自分もそれを担うのは当然。そういう意識が培われていくのも、家事を通してなのです。

 家事を担うようになると、子どもの意識が変わっていくと同時に、能力も伸びていく、と杉山さんは語ります。

<次のページからの内容>

● 家事をすることで子どもの視野が広がる
● 自分の生活がどうやって成り立っているのか、社会的視点を得られる
● 自分で対処できれば、子どもも不安がなくなる
● 子ども扱いせず、責任とともに任せるのが鉄則
● 子どもをよく観察して、何が好きなのかを知る