間もなく始まる新年度。小学4年生になると、それまで問題なく学校の勉強についていけていた子でも、授業内容が理解できずつまずいてしまったり、テストで思ったように点が伸びなかったりするケースが増えてくるといいます。その理由は「学習内容が複雑化、抽象化するから」と話すのは、小田原短期大学特任講師の鈴木邦明先生です。公立小学校教諭として長年子どもたちを指導し、学校教育の現場に詳しい鈴木先生に、学習内容の具体的な変化と、家庭での親のフォローのポイントについて聞きました。2回に分けてお届けします。

【年齢別特集 小学校高学年のママ・パパ向け】
(1) 小学生でも袴が人気? イマドキの卒業式服装事情
(2) 私立中と公立中、進路が分かれる友達との関係は?
(3) 学校の勉強は小4から難易度がぐっと上がる ←今回はココ
(4) 子どもの学びの質を上げる、家庭での親の関わり方

子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

分数や小数など、身近な生活にない数の概念が登場

 小学4年生からの学校の授業の変化は、特に国語と算数で顕著だと鈴木邦明先生は言います。 国語では、覚えなければいけない漢字の中に複雑で画数の多いものが目立つように。「例えば『競』という字。偏とつくりが一見似ていますが、下の部分の形が違いますよね。こういうクセのある漢字も一気に増えてきます」。

 変化が学習内容全般にわたり、それだけにつまずきの影響も大きいのが算数です。「それまでの子どもの生活になかったものを学ぶようになるんです」と言って鈴木先生が見せてくれたのは、教科書会社が製作した単元配当表。教科ごとに1年間で学ぶ単元(学習内容のまとまり)と授業にかける時間の配分が記されたもので、1年生では「足し算」や「引き算」、2年生では「図形」や「九九」、3年生では「割り算」「余りのある割り算」といった単元が並びます。

 「例えば足し算なら、『りんごが3個ありました。〇〇くんに2個もらったので、全部で5個になりました』というように、身近なことに置き換えて、絵に描いて説明すると理解できます。それが3年生の後半になると、4年生の学習につながる抽象化、複雑化した学習が始まる。具体的には『分数』『小数』『□を使った式』などがそうです。こうしたものは頭の中で組み立てて理解しないといけませんから、すごく引っかかる点です。他にも億とか兆といった『大きな数』も、子どもの日常にはないものですから分かりにくいんですね」

複雑で抽象的な思考のプロセスが求められる

 □というのは数学で言うところのXのこと。「5-□=3」という式があって、□に当てはまる数を考えるときに、「りんごが5個ありました。誰かが食べちゃったことで3個になりました。さて、何個食べちゃったのでしょう」と先生は説明します。すると、数字として5と3が出てくるから、足して8じゃないかと思ってしまう子もいるのだそうです。目の前にあるものの数を足したり引いたりするのではなく、□に何が入ると式が完成するのかを想像するというのは、子どもにとって初めて出合う「思考のプロセス」なのです。

 

 分数や小数も、身の回りにあるものでぱっと数えられる概念ではありません。「りんごが1個、2個は分かりやすいけれど、0.5個とか3/4個と言われると、もちろん分かる子もいますが、『えっ、どういうこと?』と引っかかってしまう子もいる。それが抽象化です」。

 学ぶ内容自体の難易度が上がることに加え、勉強につまずく子が増えてくる、現代ならではの事情もあるといいます。それは一体何なのでしょうか。

<次のページからの内容>
● 「国際理解教育」「安全教育」…授業は昔より盛りだくさん
● 学習は石垣のように積み重ねられていくもの
● 土台の不安定さは、後になって影響が出る
● 学びの「穴」は、春休みのうちに埋めておく
● 「まとめのテスト」で学習のつまずきをチェック