小学校の時は算数が得意だったのに、中学・高校で数学が苦手になってしまったという話はよく聞きます。しかし、将来文系学部に進むとしても、受験科目で数学が必要な大学もありますし、社会に出てからも数学的思考は重要視されるでしょう。子どもの可能性を狭めないために、中学以降でも数学を苦手にしないことが大切です。小学校卒業までにどのような学びをしておくとよいのでしょうか。算数教育に詳しく、教科書の編さんにも携わっている関西大学初等部教諭の尾﨑正彦さんに聞きました。

【年齢別記事 小学校低学年のママ・パパ向け】
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中学への懸け橋として触れておきたい「プラス・マイナスの数」

 尾﨑さんは中学に入ってから数学でつまずかないために、6年生の3学期や春休みの間にプラスとマイナスの概念(数学では『正負の数』という単元で学ぶ)に触れておくことを提案します。また、6年生で習う分数の割り算も、感覚として理解するのは難しいため、親子で時間をかけて確かめておきたい分野だと指摘します。

 その両方の取り組みで大切なのが、子ども自身が、頭の中で筋道を立てながら理解することです。尾﨑さんは、割合、統計の教え方について解説したこれまでの2本の記事でも、公式や解き方を教えるのではなく、「子どもが自分で考えること、つまり『子ども自身の論理』を大切にしてほしい」と話しています。それは、2020年に行われた学習指導要領の改訂の目的が、論理的思考力を身に付けさせることであり、論理的思考力は中学、高校の数学を理解するために必要なスキルだからです。

 プラス・マイナスの数の計算や分数の割り算は、授業で「こうやるものだ」と教えられ、そのまま覚えて解いてきたという人も多いのではないでしょうか。子どもに説明するのは難しいと思うかもしれません。概念として理解するにはどんな方法がよいのか、次ページから紹介していきます。