新しい学習指導要領に沿った授業がスタートしています。高学年の算数でも、単元や用語の前倒しなどの変化がありました。前後編の前編では、「割合」が1年前倒しになった背景や、苦手にならない教え方について算数教育に詳しく、教科書の編さんにも関わっている関西大学初等部教諭の尾﨑正彦さんに話を聞きました。後編の今回は、中学範囲から前倒しの内容が加わった6年生の「統計(データ活用)」について、家庭でもできる教え方を聞きます。

【年齢別記事 小学校低学年のママ・パパ向け】
(1) 「なぜ勉強しないとダメなの」に親はどう答えれば?
(2) 算数「割合」苦手な子 分数で表す方法でイメージ楽に
(3) 高学年算数「データ活用」の内容変化 興味どう持たせる ←今回はココ
(4) 中学の数学対策に 高学年のうちに筋道立て考える体験を

中学で習う内容が前倒しで小6に移動 その背景は?

 2020年に行われた小学校の学習指導要領の改訂では「データの活用」という領域が新設されました。「改定前も表やグラフを学んでいましたが、改定に伴い、これまで中学校で学んでいた『中央値』『最頻値』などの概念や用語を小6で習うことになりました」と尾﨑さんは説明します。「統計分野が充実した背景としては、OECDの過去の学力調査で、日本は統計に関する問題の平均正答率がOECD 加盟国平均に比べて低かったということがあります」

 子どもたちが大人になる頃、大学での学びやビジネスにおいて、データを扱うスキルはますます重要になっていくでしょう。

 数字の裏にある背景を正しく読み解き、それを基に自分の頭で考えられることは、文系理系に関係なく、大きな武器となります。その基礎となるのが今回内容が充実された「データの活用」です

 尾﨑さんによると、ある教科書では人数の違う2つのクラスの体力テストの成績を素材に、平均値と中央値、最頻値という3つの代表値を学びます。「『階級』や『度数分布』『柱状グラフ』などの用語も出てきます。ここで親御さんに注意してほしいのは、学校の授業で教えてもらっていても、身に付いていない可能性があること。子どもは実感のないことは簡単に忘れてしまうからです

 代表値の中でも「平均値」は「テストで平均点より上だった」「5年生の平均身長は○㎝だ」というように会話の中でよく出てきます。そのため、子どももイメージを持っていますが、中学から移動してきた「中央値」「最頻値」は家庭でも学校でもあまり使うことのない言葉です。「そのためイメージしにくく、学校で学んでも身に付きにくいのです」。それでは親はどのようにフォローしたらよいのでしょうか。次ページから尾﨑さんの教え方を聞いていきましょう。家庭でも実践できるのでぜひ参考にしてください。