昨年春から新しい教育指導要領に沿った授業がスタートしています。高学年の算数でも単元や用語の前倒しなどの変化がありました。それはどのような点なのでしょうか。算数教育に詳しく、教科書の編さんにも関わっている関西大学初等部教諭の尾﨑正彦さんに、大きく変化した点とその目的、家庭で教えるときのコツを前後編で聞きました。前編の今回は「割合」について、後編では中学範囲から前倒しにされた「統計(データ活用)」について紹介します。

【年齢別記事 小学校低学年のママ・パパ向け】
(1) 「なぜ勉強しないとダメなの」に親はどう答えれば?
(2) 算数「割合」苦手な子 分数で表す方法でイメージ楽に ←今回はココ
(3) 高学年算数「データ活用」の内容変化 興味どう持たせる
(4) 中学の数学対策に 高学年のうちに筋道立て考える体験を

「割合」が4年前倒しで登場。理由は苦手な子が多いこと

 教育指導要領の改訂については、高学年での外国語科の導入や、プログラミング教育を含む情報活用能力の育成などは以前から話題になっていました。しかし、算数でも変化があったことは知らない親も多いのではないでしょうか。大きく変わった点とその目的について聞いていきましょう。

 尾﨑さんは「高学年で大きく変わった点というと、『割合』の単元が登場するのが4年生からになったことでしょう。以前は5年生からだったので1学年早まったことになります」と話します。

 4年生では「簡単な場合についての割合」として、整数値の割合(2倍、3倍)だけを学習し、5年生で割合を小数や%で表したり、グラフにしたりする問題が登場します。4年生で習う割合は、「長さ50㎝のゴムひもがある。ゴムひもAはひっぱると100㎝に、ゴムひもBは150㎝に伸びる。それぞれ何倍に伸びますか」というような問題です。

 そもそも、なぜ割合が4年生からに前倒しされたのでしょうか。

 「割合は子どもたちが苦手とする単元で、数十年にわたって算数教育の課題でした。実際、全国の学力テストでも割合の問題の正答率は5~6割程度です。今回の改訂には、4年生のうちに簡単な数字で割合の見方を身に付けさせて、苦手な子どもを減らそうという狙いがあります。

 ただ、子どもたちが割合が苦手なことには、教える側にも責任があります。本当は割合という単元は、ある教え方をすれば意外とスッキリと理解できるもの。それをしていない授業が多いために、苦手な子が多いのです。家庭でもできる教え方なので、割合が苦手というお子さんにはぜひ、家庭で試してみてください」

 次ページでは割合を教えるときの注意点を、3ページ目からは尾﨑さんが5年生の授業で実践している割合の教え方を紹介します。