予測不可能なこれからの時代を生き抜くため、必要な力とはどのようなものでしょうか。筑波大学附属小学校(東京都・文京区)ではそれを、「失敗を恐れずに挑戦する、自ら切り開いていく力」だとしています。課外活動や学校行事を頻繁に実施し、子どもたちにあえて失敗を経験させることで、めげない挑戦心を育てているのです。

今回は、筑波大学附属小で6年生クラスを担任する、夏坂哲志先生にお話を聞きました。子どもたちの失敗事例を基に、単なる失敗で終わらせないコツや、家庭でも実践できる高学年の子どもへの声がけ、次なる挑戦につながる褒め方などについてのアドバイスをもらいました。

【年齢別特集 小学校高学年ママ・パパ向け】
(1) 筑波大学附属小 あえて先生が教えない授業とは?
(2) 筑波大学附属小が実践 失敗にめげない心の育て方  ←今回はココ
(3) 10歳からの親子関係 口出し過ぎていいことなし
(4) 中学受験 「親のため」と宣言したほうがいい理由

 子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

“切り開いていく子”を育てるには、失敗の経験が不可欠

  「これからは、道なき道を自らの手で切り開いていく子を育てないといけません。それには、“失敗の経験”が必要不可欠です」

 そう語るのは、筑波大学附属小副校長の田中博史先生です。

 「数理論理学の研究者による『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)によると、現状のAIの偏差値は、MARCHレベルの大学は楽に合格できるくらいだといいます。

 言われたことをするのに慣れ過ぎてしまった人が、今の日本には大量にいます。AIは進化していますが、それ以上に、自分の頭で考えられない人間が大多数となっています。日本産業界はあれだけ先端を走っていたにもかかわらず、取り残されています。本校の方針にもつながりますが、『切り開いていく子』を育てないといけません。

 切り開いていく子は、失敗や間違いを、恐れることなく挑戦できます。大それたことを言っているのではありません。例えば日常でも、会議でなかなか自分の意見を言わないとか、当たり障りのない意見しか出さないのではなく、ポンと自分の考えを言えるか。間違えることを臆さない人間とは、そうですよね」

 同校では、早くから「子どもにあえて失敗させること」を重視してきました。子どもが失敗をしたらしめたものだと捉え、よりよい結果につなげる思考力を養おうとしているのです。

 ただし、失敗にはリスクもつきものです。単なる失敗で終わらせないためには、いくつかのポイントがあるといいます。

<次のページからの内容>
● 何度でも挑戦できるから、失敗は怖くない
● 異学年チームで行く「きょうだい遠足」で養われる思考力
● 子どもが自分の頭で考えられる余地を残す
● 子どもの成長に慣れることなく、見逃さない努力が必要