不確実性の高い分野や課題に対応するために、効果的なのが「デザイン思考」という思考法だといわれています。そこで、デザイン思考に詳しく、小学生・中高生・大学生・企業などを対象に創造力の種を育むための教育プログラムを提供しているCURIO SCHOOL代表取締役の西山恵太さんに、デザイン思考を小学生が身に付けることのメリットや、家庭で取り組むべきポイントなどについて聞きました。

【年齢別記事 小学校高学年のママ・パパ向け】
(1) まずは30点目指す その姿勢が子の試行錯誤力を上げる←今回はココ
(2) 「根本の問題は何か」に気づく思考法 高学年で育む

デザイン思考がなぜ今必要か

 「社会の動くスピードが速くなり、今までの経験や成功体験が通用しなくなるケースが増えています」と西山恵太さん。西山さんによると、今、注目されているデザイン思考とは、一言で説明すると、「人を中心として、試行錯誤を繰り返しながら、答えを作っていくプロセス」だそう。「新しい価値を生み出すために必要な考え方の1つです」と西山さんは言います。

 「デザイン思考」と聞くと「デザイナーになるための思考法」かと思いがちですが、そうではなく、多様な課題に対して活用できる思考法だそう。

 「例えばコロナ禍は典型例ですが、子どもはもちろん、大人もどうしていいか分からない状況下で、自分たちなりに考えて行動しなくてはいけませんでした。そんなときにもデザイン思考的なアプローチをすると、自分なりの答えや新しい解決策が出せるでしょう。こういう基礎的な思考法を知っていれば、どんな場面でも力を出せるし、乗り越えられると考えています」

 デザイン思考で大事になるのは「試行錯誤」。その考え方を小学生のうちから取り入れることは、子どもの「試行錯誤力」を伸ばすことになり、大人になっても試行錯誤を恐れなくなる効果を期待できるそう。

 「家庭内でもちょっとした工夫をすれば、デザイン思考的な考え方を身に付けることは可能です」と西山さん。例えば、子どもが片付けられないといった家庭内の悩みもデザイン思考に落とし込むことで、問題を解決しながら枠組みとなる考え方を身に付けることはできるそう。

 親が醸し出してしまいがちな「100点を目指せ」といった空気が、デザイン思考的な姿勢を阻む可能性があるとも指摘する西山さんに、デザイン思考とは何か、子どもに伝えたいポイント、家庭で取り入れるアイデアなどについて、具体的に聞きました。

試行錯誤力を育む「デザイン思考的」姿勢を身に付けよう
【家庭でも取り入れられること】
◆家庭内の「困りごと」の解決に使ってみることで枠組みを理解する
◆「繰り返すこと」を勇気づける声かけをする
◆興味のある舞台を用意してあげる
◆部分的に切り出して「ゲーム」や「クイズ」にして遊ぶ

 「従来の物事の進め方は、AをしたらB、BをしたらC、CをしたらDで終わり、というウオーターフォール型でした。経験則が生きるような場面や不確実性が低い分野においてはそれで足りましたし、今もその進め方が有効な分野もあると思います。

 一方で、まだよく分かっていない分野や人類が直面していないことなどについては、ウオーターフォール型の思考法では対応できないので、デザイン思考を使います。新しい価値を生み出す場合には、どれが正解か分からないので、複数の案を何度も試します。最初は30点でいいからまず出してみて、改良して50点にして、さらに80点にして、とスパイラルで上がっていくのがデザイン思考の考え方。大事になるのは『試行錯誤』です

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