思春期に差し掛かる小学校高学年になると、親から見えない友人関係や行動も増え、訊ねても話してくれなくなったりします。非行や犯罪に自分の子どもが関わったらどうしようと不安になる人は、少なくないのではないでしょうか。

 これまで刑務所や拘置所、少年鑑別所などで心理職の仕事に関わってきた、東京未来大学こども心理学部長の出口保行さん。非行や犯罪の背景にあるものを分析した数はこれまでに1万件以上、分析までいかなくても、非行少年などに関わってきた件数を数えれば何十万件になるといいます。そんな出口さんに話をお伺いしました。

【年齢別特集 小学校高学年のママ・パパ向け】
(1)ユーチューブや動画投稿のトラブル、注意したいこと
(2)ユーチューブで培われる「発信力」と「自己効力感」
(3)子どもを非行・犯罪に走らせない「アクセプター」とは
(4)反抗的な態度や性への興味は、犯罪につながる? ←今回はココ

子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

家で物を投げたり反抗するのは犯罪の予兆?

 上編では、非行に走らせない『コスト』の話、親子のアクセプターのすり合わせを続ける必要性について解説しました。とはいえ、反抗期を迎えた子どもたちが家のなかで「暴れる」ということは珍しいことではないでしょう。家で物を投げたり、反抗的な態度をとったりすることが、非行に発展することはあるのでしょうか。

 「全然別物です! リスクとコストという話に戻りますが、家の中で皿を投げたって法律違反のリスクはないわけでしょ。暴れてない子のほうが珍しいですよ。家の中でとってもおとなしいというのも不安ですよね。家の中での問題行動と、外での非行は、延長線上にある話ではないのです。家の中でいい子で、外で問題を起こす子もいますからね」と出口さん。

 では子どもが成長する中で幼い子が好きだとか、変わった性癖が出てきたら?

 「一時的なことだったらかまいません。最後まで残る欲求は、食欲と性欲といわれてます。年を取るに従って落ちていくわけですが、ある一定の時期に高まらないと子孫の繁栄はないですよね。年齢とともに発達していくのは自然なことですし、性的な欲求を求めないようならば、逆に心配になるかもしれません。興味を持つことは仕方ないんです。成熟した女性に興味を持とうと、若い子に興味を持とうと。興味があるからといってすぐに、犯罪につながるわけではないのです」

 「難しいのは、道徳的な判断と行動化の判断が全く違うことです。母親は道徳的な判断をしがちです。『こんな風に考えるなんておかしい』とか『これは変態に違いない』とか思っちゃうんだけど、男はけっこうみんな一緒なんですよ。自分たちの夫を考えたってそうなんですよ(笑)」

 「例えば性的な部分などで、男の子にお母さんが色々と言うと、子どもはとっても腹が立つわけですよね。けんかのタネになりやすいです。男の親は『なんだ、こいつ、おかしいんじゃないか』と口で言いながら『まあ、俺も思ってるし』と心の中で思ってることもありますし、共感できる部分も男同士であるんですよ。お母さんは過敏に反応しすぎてしまうことがあります。そうなるとお父さんの出番ですよね。道徳的判断はお母さんのほうが強いけれども、それが必ずしもいいとは限らないときもある、ということです」

 犯罪者が子どものころに虫や小動物を殺していたということをニュースで聞くこともあります。虫を殺すということは、本当に心配な傾向なのでしょうか?

 「そんなことはないですね。虫に興味があって捕まえて殺してみた、ということだって、あると思います。メディアなどは犯罪者の過去の行動と、犯罪の動機を結びつけたがるのですが、それは別物です。私は短絡的に結びつけるのは良くないと思うんですよ。虫を殺した子で犯罪を起こす子は、ごくごく一部です」

 「だからこそ、過去に一度もないような犯罪が起きたりするんです。一般化しようとする考え方はおかしいんです。ただ表面上に出てきたエピソードだったということであって、何かをした子の多くが犯罪を起こしているわけじゃないんですよ」

「家の中での問題行動と、外での非行は、延長線上にある話ではない」と出口さん
「家の中での問題行動と、外での非行は、延長線上にある話ではない」と出口さん