近年、子どもの筆圧が弱く、字が薄くなっているという懸念の声が専門家の間で上がっています。筆圧が弱いとどんな問題が生じるのでしょうか。子どもの発達を研究している神奈川県立保健福祉大学リハビリテーション学科学科長・教授の笹田哲さんに詳しく聞きました。

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コロナ休校で体を動かす機会が減ったことが影響?

 新型コロナによって学校が長期間休校になるなど、今年は子どもを取り巻く環境が大きく変わりました。東京都主催の子どもの未来について考える「こども未来会議」では、「コロナで学校が休校になり、家庭で過ごす時間が増えたことで、低学年ではノートに書く際の筆圧が落ち、書き写せる分量が減っている」との専門家の指摘がありました。

 笹田さんは「近年、子どもの筆圧が弱くなっている傾向がありました。しかし、コロナ下で今年はさらに拍車がかかるのではないかと懸念しています」と言います。

 「筆圧が弱くなる大きな原因として、姿勢の悪さが挙げられます。姿勢が悪いと鉛筆の持ち方が悪くなり、筆圧が弱く、字が薄くなるのです。緊急事態宣言が明けて再開してから、たくさんの小学校を見学してきましたが、授業中に脚をぶらぶらさせていたり、背中が丸まっていたりする子どもがとても多く、特に午後になるとひどくなっていました。コロナ休校中、家の中で過ごして体を動かす機会が減ったことが、子どもの筆圧の弱さ、鉛筆の持ち方の悪さの要因になっているのではないかと考えています」

 そもそもなぜ、筆圧が弱かったり、正しく鉛筆を持てなかったりすることは良くないのでしょうか。

 「近年、タブレットを使った授業が増えています。新型コロナでオンライン授業が広まったことで、今後需要は高まることと思います。しかし、実際はテストや受験、就活など、子どもたちの大切なライフイベントでは、鉛筆で字を書くことが求められます。その際、採点、または評価する相手に分かるように、きれいな字で書くことが重要です。正しい鉛筆の持ち方ができていないと、筆圧が弱くなって読みづらくなったり、指の動きが悪くなり素早く書くことができなくなったり、指に力が入りすぎて疲れ、長い文章が書けなくなったりと支障が出ます。たかが鉛筆の持ち方、と思うかもしれませんが、それによって影響を受ける場面があるのです。低学年の今のうちに正しい鉛筆の持ち方をマスターしておくことを勧めます」

 子どもが下のような鉛筆の持ち方をしていたら要注意です。これはいずれもNGな鉛筆の持ち方で、筆圧が弱くなる以外にも、疲れるので長時間鉛筆を持っていられないなどの弊害が起こります。次のページからは、子どもたちに多く見られる「間違った鉛筆の持ち方」とその理由、解決につながる指先と姿勢の体操を紹介します。

子どもの鉛筆の持ち方、こうなっていない?

こんな持ち方をしていたら要注意。その理由は次のページから
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