社会から求められる人材像が変化するのに伴い、小学生から身に付けたい学習内容も変わってきています。データサイエンティストといった仕事に注目が集まるなど、データサイエンス力が重視されている昨今。AI時代に欠かせない力として、2020年度からの新学習指導要領では、「統計教育」が強化されました。統計教育の普及に尽力してきた渡辺美智子さん(立正大学データサイエンス学部教授)に、データを活用する力が必要な理由や、親が知っておきたいこと、日常的にそうした力を伸ばすために家庭で工夫できることなどについて前後編で聞きます。

【年齢別記事 小学校低学年のママ・パパ向け】
(1) 親も知りたい 必須のデータサイエンスは小学生から ←今回はココ
(2) 目標は「使える算数」 PPDACで問題解決力を伸ばす
(3) 思考力深まる哲学対話、親子で実践する4つのコツ
(4) 「将来の夢」実現のために低学年親ができることは

海外に後れをとっている日本のデータ活用教育

 データから価値を生み出す「データサイエンティスト」といった仕事が一般的に知られるようになるなど、データを活用する力の重要性について、見聞きすることが増えています。しかし、専門で学んだり、実際に仕事で使ったりしていなければ、親自身にとっては、縁遠いイメージがあるかもしれません。

 「子どものころに、そうした教育を受けていないので、今の親世代がそう感じるのは仕方がないと思います。データ活用のための教育は、日本ではずっと重視されてこなかった経緯があります」と、立正大学データサイエンス学部教授の渡辺美智子さんは言います。

 「日本のデータ活用教育は海外に約30年遅れています。欧米などの日本以外の多くの国では、1990年代以降、来るべき21世紀を情報とデータの時代と捉えて、学校教育を変えてきました。例えば米国では、1992年にスキャンズレポートで教育改革が提唱され、データを使って問題解決ができるようになるための教育が幼稚園から大学まで継続的、体系的に行われています。そうした取り組みがGAFA(グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル)のような企業が台頭する背景になったのではないかと私は考えています」

 GAFAは大量のデータを活用してさまざまな事業を展開しています。「データを基に人間の行動パターンを予測して、最適な広告やサービスを提供することができる現代では、膨大な量のデータ『ビッグデータ』こそが『資源』です。それを活用するための知識やスキルを持った人たちの育成が求められています」

 小学校の統計教育の強化を約20年前から提唱してきたという渡辺さん。「AI時代を見据えて、日本の学校教育でもやっと重要性が認識されるようになりました。2020年度からの小学校の新学習指導要領では、算数に『データの活用』という領域が新たに設けられました」。1年生から6年生まで毎学年、段階的に学ぶとされています。

 「不確実性の高いこれからの時代、データを活用する力は、小学生から身に付けたい必須スキル」と話す渡辺さんに、データサイエンスを学ぶ意味や、学んできていない親が今知っておきたいこと、家庭教育において大切にしたい視点などを、次ページから聞きます。

子どもの「データサイエンス力」を伸ばすには?
次ページから読める内容


・今の親世代が知っていること、習っていないことって……?
・データを用いて批判的思考力を養うために、子どもに投げかけたい声かけとは
・データの扱い方やグラフの作り方を知らないと、だまされやすい人になるってホント?
ほか