「算数ができる子どもは幸せになる」(宮本哲也先生)、「算数ができる子は賢い」(陰山英男先生)というお二人の先生に、その理由や算数ができるようになるためのコツを伺ってきました。もちろん、楽しめる問題を用意してあげたり、頭の中に計算のショートカットを作るようにしたりすることは重要なのですが、小学校低学年となると、まず「時間を意識させる」ことが大変だったりしますよね。家に帰ってからランドセルの中を確認しようともせず、なかなか翌日の準備ができない。ましてや宿題など、全く取り組む気配がなく、寝る直前に親に叱られて泣きながらやる……。

 どうしたら、「なかなか宿題(勉強)に取り組まない子」は勉強に取り掛かりやすくなるのでしょうか。「いつまでにこれをやる!」というスケジュール感覚を身に付けるためには?

 公立小学校で23年間、教師を務めた経験からメルマガ「『親力』で決まる子供の将来」を発行する教育評論家、親野智可等さんにコツを聞きました。

【年齢別特集 小学校低学年のママ・パパ向け】
(1) 算数ができる子は幸せになる! 2大禁止項目とは
(2) 陰山先生直伝! 百ます計算・徹底反復の本当の意味
(3) なかなか宿題しない低学年は“とりあえず方式”が効く ←今回はココ!
(4) 単純計算でウオーミングアップし勉強スイッチ入れる

 子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

“とりあえず準備方式”を取り入れよう

 小学校低学年のうちは、なかなか自分で時間を管理するということができないものですよね。寝る直前になって「どうして明日の宿題がまだ終わってないの!」と叱る親御さんも多いかもしれません。

 ところが「どんなに叱ったって改善されません」と親野先生。叱るより、まずは子どもが勉強に取り掛かりやすくするために、“とりあえず準備方式”“とりあえず1問方式”を取り入れることを勧めています。

 例えばある低学年の男子がいるご家庭では、玄関にランドセルが2つ入るくらいの、深さ5~6センチメートルの広くて浅い箱を用意し、学校から帰ってきたら遊びに行く前にその箱の中にカバンの中身を全部出すように約束しました。それだけすれば遊びに行けるので、子どもは約束を守り、箱の中には算数の宿題プリントも、書き取りドリルも、筆記用具も全部出た状態になりました。「結果、子どもは遊びから帰ってきたときに、宿題のプリントなどが目に入って、手に取りやすくなったんですね。全部、箱の中に中身が出ているので手に取りやすい。そして、宿題に取り掛かりやすくなったという好例です」と親野先生。これが、“とりあえず準備方式”の一例です。

 ランドセルを開けることすら面倒臭がる子どもも、中身が一目瞭然になれば、やるべきことが見える化でき、取り掛かりやすくなる。とりあえず準備することで、次のステップに進みやすくなるわけです。

 また、勉強に取り掛かりやすくする工夫としてもう一つおすすめな“とりあえず1問方式”は、例えば、算数ドリルの宿題をやらないというのであれば、「1問だけやったら、遊んでいいよ」と言うというもの。「『1問だけやればいい』とは言うのですが、やり始めると、当然、宿題の全体が目に入ります。すると、漠然とではありますが、子ども自身、見通しがつくようになるのです」と親野先生。こちらもやはり、宿題の全体量がどれくらいかなど、やるべきことの見える化ができることが大きく、「ある程度の見通しがついていると、本格的に取り掛かるときのハードルがグンと下がります」と言います。

 そして子どもは当然ながら人生経験が少ないので、自分で見通しを立てるのは至難の業なので、「そこを親がうまくサポートしてあげることが肝心です」とも。

 “とりあえず準備方式”と“とりあえず1問方式”は、夏休みや冬休みなどの長期休暇にも有効で、例えば、朝ごはんの後に勉強すると決めたのであれば、朝ごはんの前にとりあえず、勉強の準備をしておく。あるいは、1問やっておくようにすると、これによって、徐々に勉強の習慣が身に付いてくると言います。

<次のページからの内容>
● “模擬時計”で時間を意識できるように見える化
● 模擬時計は、親子で一緒に作る
● スケジュール管理能力を高めるホワイトボード活用術
● 時間管理術は“人生の質”にも直結