「算数が得意な子は、頭が良い」。そんな言葉がそこかしこで聞かれるようになりました。実際、日経DUALの読者の皆さんの中も「算数(数学)ができる人は賢い」というイメージを持っている方は多いのではないでしょうか。

 これに対し、「算数ができる子が頭がいいというよりは、算数ができない子は幸せになれないんです」と話すのが、宮本哲也先生です。小学校3年生から(2018年度は2年生から)の無試験先着順の教室「宮本算数教室」で、卒業生の80%を首都圏トップ中学校に進学させてきた宮本先生は、なぜ「算数ができない子は幸せになれない」と説くのでしょう。

 また、算数ができる子に育てるために、親がしてはいけないこととは?

【年齢別特集 小学校低学年のママ・パパ向け】
(1) 算数ができる子は幸せになる! 2大禁止項目とは ←今回はココ!
(2) 陰山先生直伝! 百ます計算・徹底反復の本当の意味
(3) なかなか宿題しない低学年は“とりあえず方式”が効く
(4) 単純計算でウオーミングアップし勉強スイッチ入れる

 子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

算数ができない子は幸せになれない!?

 算数ができる子=頭が良い子というイメージを持つ人も多いと思いますが、これに対し宮本算数教室の宮本哲也先生は「算数ができないと幸せになることができないんです」と言います。なぜでしょうか。それはそもそも何のために学ぶのかということに関わってくるといいます。

 「子どもが何のために学ぶのかというと、幸せになるためです。幸せとは何かというと、自分らしく生きることで、そのためには自分なりの価値観を持たなければなりません。そして自分なりの価値観を持つためには、自分の頭で考える力を付けなければなりません」。人生には自分で考えて決断していかなければならないシーンが多々あります。この「考える力」を付け、「自分なりの価値観」を築くために、算数は最良の学習手段ということになります。

 「私のテキストで、4年生の最初に始める問題に『AとBの和は20、差は6です。AのほうがBより大きいとき、ABはそれぞれいくつですか』というものがあります。皆さんはどう考えましたか? すぐに、数式が出てきたのではないでしょうか?」と宮本先生。数式が出てくるのはこの問題を理解できているからで、子どもの場合、数式の一つ前の段階、つまり条件を整理する能力を養わなければなりません。簡単に言えば、それが考える力につながるというわけです。

 ただこう聞くと、「だったら、考える力を付けるために、一日でも早く算数を勉強させなければ!」と意気込み、小学校低学年あるいは未就学児のうちから学習塾に通わせて詰め込み教育をしてしまいそうですが、宮本先生はこのやり方に異を唱えます。

 「いろいろな塾がありますが、少なくとも小さいうちから算数の公式をたたき込むような塾に通わせて何とかしようという発想は、間違えていると言えます。動物に芸を仕込むのとは訳が違いますから」

 むしろ親が無為に計算式を覚えさせることで退屈し、算数はつまらないものだと子どもに思わせてしまう可能性もあるというのです。

 次ページではさらに詳しくその理由を聞いていきます。

宮本哲也先生
宮本哲也先生
<次のページからの内容>
● 早期教育には意味がない
● 算数以外の興味があることに集中させる
● 親が言ってはいけない、2大禁止項目とは
● 算数に興味がない子はずっと、算数に取り組まない?
● どんな問題を提供するかがポイント
● 誰でも算数が得意に?