子どもたちが社会に出るころには、働き方もその環境も、求められる能力も今とは大きく変わっていることでしょう。では、そのときに必要とされるのはどんな能力で、子どもが低学年のうちに、親はどう導けばいいのでしょうか。将来の選択肢を増やし、主体的に人生を選択できるようになるために必要な抽象概念の身に付け方について、統合型学習塾「知窓学舎」代表の矢萩邦彦さんに聞きました。

【年齢別記事 小学校低学年のママ・パパ向け】
(1) 地頭のいい子は観察力が違う 視点を変える親の声掛け
(2) 子の一人歩きは日本独特 防犯のために親ができること
(3) 「抽象化」は生き抜くスキル 低学年の親ができること ←今回はココ
(4) 違和感の伝授は親からのギフト 子ができる5つの防犯

今後、働くために必要となる新スキル

 IoTや人工知能への対応などにより、子どもたちが大人になる時代には、これまでとは違う能力が求められてきます。どのようなスキルが必要なのでしょうか。

 「限りある資源を活用して問題を解決したり、イノベーションを起こしたりできる人が求められています。また、主体的に人生を選択し、好きなことをして働いていくためには、雇用される以外にも、起業やフリーランスも含めて選択肢を広げていく必要があるでしょう。それらを可能にする学びとして、最近注目されているのがアントレプレナーシップ教育です」

 こう話すのは、小中学生の学習にアントレプレナーシップ教育を導入している「知窓学舎」の矢萩邦彦さんです。

 ビジネスクールや大学などではアントレプレナーシップ教育が必須になっています。経済産業省・中小企業庁の「学びと社会の連携促進事業(起業家教育)」では、アントレプレナーシップ教育は以下のように定義されています。

『起業家マインド(チャレンジ精神・創造性・探究心など)』を養う

『起業家的資質・能力(判断力・実行力・リーダーシップ・コミュニケーション能力など)』を養う

 「アントレプレナーシップ教育は、『スタートアップの起業家を育成する学び』というイメージを持つかもしれませんが、実際には、主体的に人生を選択できるようになるための学びです。アントレプレナーシップは、既に、一般のビジネスパーソンにとっても欠かせないと言われるようになりました。子育てにおいても、『うちの子は起業家にさせるつもりはないから、起業家マインドなんて必要ない』という考え方ではいられないでしょう」

 アントレプレナーシップのベースとなるのは、抽象概念だと矢萩さんは言います。

 「言語化できることは今後、AIがどんどんプログラム化していきます。一方、AIが代替できない仕事は、『言葉で説明するのは難しい』ものや『多くの分野や領域に関わる』ような抽象度の高いもの。そうした仕事を作り出したり、その担い手になっていったりするためには、アントレプレナーシップ教育のような、探究型の学びが不可欠です」

 抽象概念は、一般的には小学校高学年くらいから自然に身に付いていくものですが、低学年のうちから、家庭で取り組めることもあるといいます。次のページから、矢萩さんに詳しく説明してもらいます。