子育てにおいては、親は多少のことには動じず、子どもの成長をゆっくり見守るのが理想です。しかし実際には、わが子を他の子どもとつい比べてしまい、「ほかの子ができることがうちの子はできていない」などとムダに焦って、必要以上に頑張らせてしまうパパやママは少なくありません。

 「ムダに焦ってしまうのは、軸が定まっていないから。仕事で日常的にやっているように、目的やKPIをしっかり設定すれば、他の子と比べてしまうこともなくなるはずです」。こう話すのは、3歳の女の子のママで、ボストン コンサルティング グループや米GEインターナショナル、日本IBMなどを経て2012年に独立した戦略系コンサルタントの秋山ゆかりさん。

 「ビジネススキルはそのまま共働き子育てにも役立つ」が持論の秋山さんに、前回記事「家事のBPRで子どもと過ごす時間はもっと増やせる」に引き続きご登場いただき、子育てにも役立つ目的&KPI設定の方法をレクチャーしていただきました。

【年齢別特集 小学校低学年のママ・パパ向け】
(1) 体育の苦手意識を払拭! 楽しみながら足が速くなる
(2) 専門塾に学ぶ、体育が苦手な子に教えるノウハウ
(3) 家事のBPRで子どもと過ごす時間はもっと増やせる
(4) 正しい目的&KPI設定で「比べない子育て」可能に ←今回はココ

 子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

子どもの習い事がストレスの源に…

日経DUAL編集部(以下、――) 実は、「ムダに他の子と比べてしまい、焦ってしまう」というのは、他ならない私(編集H)自身の悩みです。夏前まで、6歳の長女をピアノのグループレッスンに通わせていたのですが、そこは親も子どもの隣に座って一緒にレッスンを受けなければならないシステムだったので、私自身が、わが子を他のお子さんとつい比べてしまってレッスンを全然楽しむことができず……。

 子どもに対しても「○○ちゃんや△△ちゃんみたいに、もっとちゃんと練習しなさい!」と厳しい態度で迫るようになってしまい、自分で作り出したストレスに自分自身が耐え切れなくなって、やめさせてしまった経緯があります。その後、個人レッスンに切り替えたところ、幸い、子どもは楽しく通ってくれているし、私自身も他のお子さんと比べずに済むようになったので、今のところ、心の平安を保てているのですが、近々発表会があるため、また同じことが起こるかも…と思うと、内心気が気ではありません(笑)。

秋山ゆかりさん(以下、秋山) それは大変ですね。そもそもなぜ、ピアノのレッスンに通わせているのですか?

―― 自分自身が子ども時代にピアノを習っていて、ある程度弾けるようになって良かったと感じているので。娘にも同じように、ピアノが弾けるようにしてあげたいな、と。

秋山 ピアノを弾けるようになって良かったと思うのはなぜ?

―― 自分のその時々の気分や感情を音で表現することができるから。大人になった今でも、メンタルのコントロールに役立つと感じています。

秋山 ということは、「上手にピアノが弾けること」ではなく、「ピアノで気持ちを表現すること」が目的ということですね。そもそも、それがピアノである必要はあるのでしょうか?

―― ……そう言われてみると、確かに、ピアノである必要はないかもしれませんね。ギターでもいいし、リコーダーでもいい。歌でもいいですよね。とにかく音楽に親しみ、音楽で自分の気持ちを表現できる子になってほしい。はい、それが母親としての私の願いであり、目的です。

秋山 ……だんだん見えてきましたね。このように、「そもそも」「なぜ」を繰り返して物事を掘り下げていくのが目的設定の基本です。仕事の場合は、上司やチームメンバーでブレストしながら行ったりしますが、子育ての場合は、自問自答したり、家族でよく話し合ったりするといいでしょう。自分たちなりの目的をしっかり設定することができたら、軸が定まるので、その都度迷ったり、他のお子さんと比べようとも思ったりしなるはずです。

目的設定のポイント

・「なぜ」「そもそも」を繰り返して物事を掘り下げていき、「真の目的」をクリアにする

家族でよく話し合い、目的をしっかり設定すれば迷いはなくなる
家族でよく話し合い、目的をしっかり設定すれば迷いはなくなる

―― 確かに、「音楽で気持ちを表現できるようになってほしい」という目的において、他の子よりうまいとか下手とかは関係ないですよね。真の目的をクリアにしただけで、私自身の悩みはだいぶ解決したように思うのですが、目的を設定するだけでは解決しない場合もありますよね。その場合は、どうすればいいのでしょうか。

<次のページからの内容>
・複数の理論を比較検討し、「わが家流KPI」に落とし込む
・KPIで子どもの運動能力が向上!
・夫婦は「年の近い同僚同士」「子どもは新入社員」
・職場の人間関係に例えれば家族関係は良好に保てる