子どもを狙った事件が報道されるたびに、どうすれば子どもの安全を守れるのか、悩まされます。それに対し「犯罪に巻き込まれるのを防ぐには、親が通学路を細かく把握し、防犯対策をしっかりセットできているかが肝です」と、子どもの防犯に詳しい宮田美恵子さんは言います。前回の記事にある「親がすべきことの基本」に加え、親が子に伝えるべきルールや防犯の具体策など、家庭でできる安全教育について教えてもらいました。

【年齢別特集 小学校低学年のママ・パパ向け】
(1) 低学年の通学路 「見守りつなぎ」で子の安全守る
(2) 誘拐などの犯罪は微増 親が子に伝えるべきは? ←今回はココ
(3) 子どもの身長が伸びる時期に必要な生活習慣

生活の多様化に犯罪を生みだす隙がある

 最近でも川崎の殺傷事件を筆頭に、各地で幼い子どもを狙った事件が報道されています。こうした報道は私たち親を震撼させ、わが子の安全を守ることの難しさを実感させますが、実際のところ、こうした幼い子どもを狙った事件は増えているのでしょうか?

 「わが国の犯罪認知件数は下がってきています。子どもへの犯罪で一番多いのは窃盗です。自転車を盗られたとか、自転車のカゴに入れて置いたゲームソフトを盗られたとかいうものですね。実は犯罪のなかで大きく減少しているのはこの窃盗の割合です。その影響で全体の犯罪認知件数が下がって見えているだけで、実際は、親が一番恐れている誘拐などの犯罪は、微増しているというのが最近の状況です

「窃盗」が減少している一方、「傷害」「公然わいせつ」「略奪誘拐・人身売買」が増加
「窃盗」が減少している一方、「傷害」「公然わいせつ」「略奪誘拐・人身売買」が増加

 こう語るのはNPO法人日本こどもの安全教育総合研究所理事長の宮田美恵子さんです。たびたび子どもを狙った事件が報道され、親はもとより社会全体の防犯意識が高まると共に、街にも子どもの所持品にも、防犯カメラ、携帯電話、防犯ブザーなどといった防犯アイテムが行き渡ってきたように思えますが、それでも犯罪が増えている理由は何なのでしょう?

 「共働き家庭が増えるなど、家族の在り方が多様化することで、子どもの生活パターンも多様化していることも原因の1つだと思います。かつてのように多くの人たちが同じようなライフスタイルであったころは、下校時刻の地域の見守り活動などによってある程度担保できていた防犯対策が、下校後に学童に行ったり、一人で帰ったり、塾や習い事に行ったりと、行動パターンが多様化している今の時代は機能しにくくなっています。そうしたなかで、前回もお話した『見守りつなぎ』の輪から抜け落ちてしまう子がでてきてしまっているように思います。家庭の機能がアウトソーシングされていくなかで、子どもを見守る体制がまだ完備されていないという過渡期の状況にあって、その隙をつく形で犯罪が起きているようにも見えます」

 宮田さんはこのような時代だからこそ、地域の善意の見守り活動や学校の安全教育だけでは不十分だということを親が十分に意識し、親の責任において、子どもの安全を守ることが必要だと話します。次のページからは、親が子どもに教えられる安全教育とその具体策について聞きます。