毎日仕事と子育てで飛ぶように時間が過ぎ、さらに夏休みは学童のお弁当を作って、子どもの毎日の過ごし方にも気を配らないといけない……。体がいくつあっても足りないこの時期、ついイライラしたり、子どもや夫(妻)に強めの言葉を投げかけてしまったりということはないでしょうか?

 そんなときに知っておきたいのが、自分の怒りの感情と上手に付き合う「アンガーマネジメント」です。日本アンガーマネジメント協会代表理事の安藤俊介さんに、アンガーマネジメントの考え方と実践方法について聞きました。

【年齢別特集 小学校低学年のママ・パパ向け】
(1) 共働きっ子の夏計画 好奇心を育むサマープログラム
(2) 夏休みの宿題 低学年の子に必要な親のサポートは?
(3) 親のイライラ 大切なのはコントロールすること ←今回はココ
(4) 子どもの怒り 「上手に表現する方法」を親が教えて

子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

怒りは、自分が大切にしているものを侵害されたときに生じる

 アンガーマネジメントとは、アメリカ発祥の心理トレーニングのことです。日本でも近年注目度が高まっているので、耳にしたことのある人も多いのではないでしょうか。感情というのは目に見えないだけに、自分のことであってもつかみきれないもの。特に怒りやイライラは、自分自身を疲弊させ、周囲との人間関係にもネガティブな影響を及ぼすことが往々にしてあります。

 では、アンガーマネジメントはそうした怒りの感情を抑えるものかというと、そうではありません。目的は、「自分自身の怒りを知り、コントロールすること」。それによって、人間関係や仕事でのパフォーマンスなど、自分の周りに関するあらゆる物事によい循環が生まれるようになるといいます。

 「怒りの感情自体には、良いも悪いもありません。何が大切で、何が重要なのかを自分に知らせるための信号です。怒っているというのは、自分の大切にしようとしているものを侵害されている状態なのです」。怒りのメカニズムについて、安藤さんはこう解説します。

 大切にしているものというのは、例えば価値観のこと。自分が「こうすべき、こうあるべき」と信じていることが目の前で裏切られたときに、人は怒りを覚えるといいます

 「共働きの夫婦であれば、『夫婦間で家事を分担すべき』とお互いに思っていると思います。しかし妻は『(夫は)全然家事をやっていない』と考え、夫は『いや、自分なりにやっている』とけんかになります。お互いに『手伝うべき』『分担すべき』という価値観を持ってはいるけれど、程度が違うから合わないんですね」

 安藤さんによると、怒りの中でも家族に対する怒りの扱いが最も難しいのだそうです。理由は、そこに甘えがあるから。「人の根底には、『家族は自分の言っていることを理解してくれるはず』『家族は自分の言うことを聞くはず』という思い込みがある。その結果、思い通りにいかなかったときに、余計に怒りの感情が強くなってしまうのです」

 最も身近で多くの時間を共に過ごす存在だからこそ、怒りで関係が悪くなることは避けたいもの。そのためには、自分がどういう「~べき」を家族に対して持っているのかを理解しておく必要があります。具体的には、どうすればいいのでしょうか。

<次のページからの内容>
● 自分の中の「こうあるべき」を言語化し、夫婦ですり合わせる
● 「上手に怒る」ためのルールとは?
● 自分と異なる価値観の許容範囲は、トレーニングで広げられる
● 大切なのは、「~べき」の境界線が一貫していること