小学生の夏休みといえば、読書感想文や自由研究、日記などの宿題がつきもの。普段の宿題より量も種類も多く、低学年のうちは子どもが一人で計画的に取り組むのは難しい部分もあるでしょう。

 「宿題は無理やりやらされても学力は伸びません。大事なのは学ぶのが楽しいという経験をさせることです」。こう話すのは、東京都の公立小学校で35年にわたって教壇に立ち、子どものやる気を引き出しながら、基礎学力を確実に身に付けさせる独自の教育を実践してきた杉渕鐵良先生です。夏休みの子どもの学習に対する親の向き合い方について聞きました。

【年齢別特集 小学校低学年のママ・パパ向け】
(1) 共働きっ子の夏計画 好奇心を育むサマープログラム
(2) 夏休みの宿題 低学年の子に必要な親のサポートは? ←今回はココ
(3) 親のイライラ 大切なのはコントロールすること
(4) 子どもの怒り 「上手に表現する方法」を親が教えて

子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

宿題を「やったか、やらないか」だけで見るのは無意味

 最近は公立の小学校でも夏休みの宿題の考え方に幅があり、ほとんど出さない学校もあれば、読書感想文、自由研究、朝顔の観察、毎日の日記、ワークブックなど、かなりの量を課す学校もあるのだといいます。

 杉渕先生は、「宿題」という言葉を子どもたちに対して使わないのだとか。「宿題と言うだけで、『やらされるもの』というイメージが湧きますよね。だから私は『家庭学習』だと思っています。学習も、楽しく学ぶ『楽習』。勉強はもちろんやらなくてはいけないものですが、『嫌だなあ』と思うのと『ちょっとやってみようかな』と思うのでは、モチベーションが全然違います

 家庭での勉強で一番意味がないのは、「やったか、やらないか」だけの話になってしまったり、「2時間勉強すればいい」などと時間の長さだけで親が判断したりすること。「それだったら宿題なんてないほうが、家庭の幸せに貢献しますよ」と杉渕先生は言い切ります。

 「やる気がない子の親御さんから、『先生、どうしたらいいんでしょう? 宿題を無理やりやらせると泣くんです』と相談されたりしますが、それは当たり前。そういうときは、毎日お父さんとお母さんで、計算の競争をしてくださいと伝えます。早くできた人が『イエーイ!』って盛り上がったり、『お父さん、結構強いわね』なんて話したりしていると、子どもは『僕もやりたいなあ』と言ってきます」

 「子どもは宿題をやりたくなるんじゃなくて、楽しいことを一緒にやりたいんです。だからこそ大事なのは、計算を『楽しそうに』やっていること。そもそも人間は、分からないことが分かったり、できなかったことができたりすることに快感を覚えるもの。子どもが嫌いなのは勉強ではありません。間違いを指摘されたり、怒られたりしてばかりいると、勉強と怒るがセットになってしまうために、宿題をやらなくなるわけです。勉強を楽しいと思うか、苦痛だと思うかは、低学年のときの勉強との関わり方で決定的になります

 夏休みの宿題でも、大切になってくるのは子どもの学びたい気持ちをいかに引き出すかです。親はどんなことを意識してサポートすればいいのでしょうか。

<次のページからの内容>
● 離れていても子どもの頑張りを認め、「共感」する
● ひらがなや計算の復習は、ちょっとした工夫で楽しくなる
● 長い休みこそ、学びたい意欲を伸ばす先取り学習を
● 家族のトランプ遊びで、計算の感覚を身に付ける
● 読書感想文は、読み聞かせ&親が書いてもいい?
● 低学年の基礎学習は、スポーツのように反復することが大切
● 夏休みの家庭学習 ここがポイント