正解がないと言われる時代をたくましく生きていくために、不可欠なのが、「自分で考えて判断する力」。親が子どもの教育を考える上で、今、強く意識したいポイントでもあります。そこで、小学生に「考える力・伝える力」を教えている狩野みきさんに、低学年の子どもの親が家庭での会話の中で心がけたい声かけの工夫を聞きました。2本建ての前編は「考える」レッスンの入門編です。

【年齢別特集 小学校低学年のママ・パパ向け】
(1) 低学年から「考える」を習慣に 家庭でできること ←今回はココ
(2) 小2から実践!家庭でクリティカル・シンキング
(3) 低学年お手伝い 親子で楽しみながらステップアップ

「考える力」は小学生のうちから指導すべき

 2011年から小学生向けに「考える力・伝える力」を教えている狩野みきさんは、高校2年生と中学1年生の2児のママ。「考える力イニシアティブTHINK-AID」を主宰するほか、慶応義塾大学や東京芸術大学などで英語と「考える力」の授業を持つ大学講師でもあります。小・中学生向けの習い事としては珍しい、このような教室を開こうと思ったもともとのきっかけは、長年、大学で英語を教えてきた中で、「日本の大学生は文法や単語力などの英語運用能力は高いのに、コミュニケーションで肝心の『伝えたいこと』が不足している」と感じたことだったと言います。

 そこで、大学で「考える力・伝える力」の授業もスタートさせました。ただ、「日本は、社会も学校も考える力をあまり育んではくれません。正解主義に慣れてしまって、常に正解を追い求めるクセが付いてしまうと、新たに考える力を養うことはたやすいことではないと実感しました」と狩野さん。「まだ柔軟な思考力を持っている小学生のうちから指導すべき」と考えた狩野さんは、東京・港区で、小2以降を対象にした教室をスタートさせました。

 「しっかり考えるためには、しっかりした言葉を持っていることが不可欠」と狩野さん。「自分の中の考えを深めていくためには、ある程度の語彙力や言語運用能力が育っていなければいけない」という理由で、教室の対象を小2からにしていますが、それより小さな時期からできることはあると言います。それが、「考えるクセ」を付けさせるということ。

 「家庭こそが、考える習慣を身に付けるのに最適な場です」と狩野さんは言います。

 「考える習慣付けは、かしこまってわざわざ特別な時間を設けて行うものではなく、普段の親子の会話の中に、自然に取り入れていくものです。例えば、『どうして…なの?』と子どもが聞いてきたときには答えを言うのではなく、『どうしてだと思う? 一緒に考えてみよう!』と提案し、親も答えを見つける過程を一緒に楽しむ。この姿勢を大切にしてください」

 親子の会話を通じて考える習慣を身に付けるポイントを次ページから詳しく紹介します。まだ言語がそれほど発達していない小学1年生以下の子どもでもOKです。「考える力」レッスンの入門編として、ぜひ実践してみてください。