誰でも小さい頃は、おねしょをした経験があるでしょう。しかし、小学校に入学してからも続いていたら? 実はこうした悩みを抱えている子どもは、5〜15歳で約80万人いると推定されています。東京成徳大学教授で心理・教育相談センター長の田村節子さんに、長引くおねしょの原因やそれによって引き起こされる心理的影響について詳しく聞きました。

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アレルギー疾患に次いで多い「夜尿症」

 「もう! 小学生にもなっておねしょなんてして」。忙しい朝、小学校に上がった子どもがおねしょをしていたら……思わずこんなふうに言ってしまいたくなる日もあるかもしれません。しかし、長引くおねしょの原因は、「夜尿症」という病気である可能性があることを知っているでしょうか?

 「5歳以降で月に1回以上のおねしょが3カ月以上続くと、『夜尿症』という慢性小児疾患として治療の対象となります。基本的には、夜間の尿量に対して膀胱(ぼうこう)の容量が小さい状態にあるため起こります。すべての理由が科学的に解明されているわけではありませんが、その原因の一つは、夜間に多く分泌される抗利尿ホルモンという、体に必要な水分を尿にさせないようにするホルモンの分泌が少ないこと、そして、眠りが深く尿意を感じにくいことなどがあるといわれています」

 こう話すのは、現在、医師と共に夜尿症の現状を研究し、その現状を学校現場に伝える活動をする、公認心理師・臨床心理士の田村節子さんです。田村さんがこうした活動をしているのは、「長引くおねしょに病気の可能性があることがほとんど知られておらず、多くの親子が悩んでいる現状があるため」だと言います。

 「夜尿症の子どもはアレルギー疾患に次いで多く、全国の小児全体(5~15歳児)の6.4パーセント、約80万人いると推定されています。治療をしなければ、高学年までに自然に完治する子は約半数にとどまり、1~2パーセントの子は大人になってからも症状が続く一方、治療をすれば、半年後には約80パーセントの子どもで症状が軽快し、治療後2年で75パーセント以上の子が治癒すると報告されています」

 つまり治療さえすれば、「夜尿症」は比較的治りやすい病気といえるのです。しかし、「おねしょ=病気ではない」という思い込みがあると、治療せずに放置してしまい、結果として、親が子どもの自尊心を傷つけるような言動や態度を取り、子どもに深刻な心理的影響を与えることもあるといいます。

 子どものおねしょが長引いているとき、親はどのようなことを意識すればいいのでしょう? 田村さんに詳しく聞きました。

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