仕事において、一人ひとりが十分なパフォーマンスを上げるためには、組織において心理的安全性が確保されていることが大切だと言われます。それをそのまま自分の子育てにも当てはめ、家庭における子どもの心理的安全性の確保を意識している親も少なくないはず。しかし、親子間では子どもに厳しく接したり、何かをさせたりしなくてはならない場面も多く、なかなか難しいと思っている人もいるでしょう。親が「よかれ」と思ってしている声かけが、逆効果になっている場合もあるとのこと。家庭での「心理的安全性」の考え方や、日常に取り入れたい習慣などについて、聞きました。

【年齢別記事 小学校低学年のママ・パパ向け】
(1) 気になる第1子の「王様気質」、カギはリーダー教育
(2) 低学年が取り入れやすいADHDの子向け片付け対策
(3) 子の心理的安全性 家庭での確保難しいと感じる場合は ←今回はココ
(4) 感情や行動を自分でコントロールできる子に 学力向上も

企業でも家庭でも、文化として醸成する必要がある

 「心理的安全性とは、組織の中で、遠慮したり恐れたりせず、誰に対しても自分の考えや気持ちを共有できる状態のことだと私は考えています。米Googleのチームづくりのリポートなどがきっかけで日本でも注目され、職場で実践しているママやパパも多いかもしれません。職場と家庭では全く同じではありませんが、家庭での心理的安全性も大事です」と、子供教育創造機構理事の赤井友美さんは言います。

 「心理的安全性は文化として醸成する必要があります。私自身は、新卒でリクルートに入社し、『あなたはどうしたいの?』と言われ続ける同社の企業文化の中で働いたおかげで、先輩に対しても、自分の意見を遠慮せずに言うことが当たり前になりました。反対に、上に意見を言うことがよしとされない雰囲気が職場にあれば、みな言わなくなります。部下は『方向転換したほうがいい』と思っていたけど、声を上げられず、悪い結果に陥ってしまったというのはよく聞く話です」

 赤井さんは同社を退職後、仲間と起業して民間学童を設立。現在は、3校舎を運営して、プログラムづくりや人材育成を担い、私生活では2人の息子を育てるママでもあります。「教育アドバイザーとして、小中学校でキャリア教育を伝える授業などもしていますが、心理的安全性がないと、自己決定ができなくなる恐れがあります。自己決定や、自分の内的な価値意識(内発的動機)が個人の幸福度と相関関係があることは研究データで指摘されています。

 企業文化と同じで、家庭内でも、それまでの子育ての歴史の中で脈々と醸成された文化が子どもに影響します。『言ってもどうせ怒られる』『言ってもきっとダメだ』などと子どもが思ってしまうような環境で育ってきた場合、ある日突然覆すのは難しいものです」

 とはいえ、家庭では、子どもに言って聞かせたり、何かをさせたりしなくてはいけない場面も多いもの。子どもの心理的安全性を確保することばかりを考えていては、しつけや日常生活が立ちゆかなくなるかもしれません。また、「子どもに『どうしたい?』と聞いても何も答えない/大した答えが返ってこない」などと不安になったり、逆に「家にいるときの子どもは気を抜き過ぎなのでは?」とイラ立ったりしている人もいるかもしれません。

 「家庭において、完璧に心理的安全性を確保するのは無理だと思います。しかし、だからといってすべて諦めることはお勧めしません」と赤井さん。では、親はどのようなスタンスでいればいいのでしょうか。

 親が「よかれ」と思ってやっていることが、心理的安全性という側面から見て、逆効果になっている可能性もある、とも指摘する赤井さんに、心理的安全性が子どもの将来のために大事な理由や、具体的に心理的安全性を高める方法などについて聞いていきます。

この記事で読める内容

・子育てのあるべき「ゴール」と、そこに到達するために「心理的安全性」が必要な理由
・家庭において、すべての場面で心理的安全性を確保するのは無理。ではどうすれば?
・子どもの心理的安全性を確保するために「読み聞かせより毎晩したほうがいい習慣」とは
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