「こんなものを見せたら、子どもにとってトラウマになっちゃう」。そう思って、怖い出来事や、不安になりそうな情報などを、子どもの周囲から排除することがあるかもしれません。親のそうした対応は、本当に正しいのでしょうか? 認知行動療法の専門家でスクールカウンセラーの松丸未来さんに聞きました。

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子どもが「怖い思い」をするのは、避けたほうがいい?

 ある共働きママのA子さんは、夫の祖母が亡くなり、低学年の子どもを連れて告別式に参列した際、こんな経験をしたといいます。

火葬後、祖母のお骨を子どもと骨つぼに移していて、ふと気づくと、さっきまでいたはずのうちの子と同年代のいとこたちが、誰もいなくなっていました。後でいとこの親の一人から、「子どもたちがショックを受けるかもしれないから」という理由で、別室に連れて行かれていたと聞きました。

それぞれの家庭で教育方針は違うと思いつつ、こうした対応は適切なのだろうか、過保護なのではないかと気になってしまって……。

 「トラウマになったらかわいそう」。そう思って、ショックを避けるために、親が先回りして手を打つことは、あらゆるシーンで見られるのではないでしょうか。例えば、昨年、大ヒットした『鬼滅の刃』。低学年やそれより小さな子どもから「見たい」と言われた際、「残虐な描写もあるけれど、本当に見せてもいいものだろうか?」などと、迷うのもそうした心理によるものでしょう

 「子どもに怖い思いをさせたくない」という気持ちから、怖い出来事や情報そのものを遠ざけようとする親の行為は、そもそも正しいのでしょうか? 認知行動療法の専門家でスクールカウンセラーの松丸未来さんは、「子どもにとって、怖い出来事を見聞きすること自体は、そこまで問題ではありません。それ以上に気を付けたいのは、子どもの感情にフタをしてしまうことです」と話します。どういうことでしょうか?