入学式や始業式が終わり、本格的な新生活がスタート! 環境の変化で心身に影響が現れやすいこの時期、親はどのようにケアすればいいのでしょうか。

精神科病院で6年間勤務し、山梨県や静岡市、名古屋市のスクールカウンセラーとして活動、現在は愛知学院大学で特任講師も務める、かけい臨床心理相談室の掛井一徳さんに、低学年の子どものケアについてお話を聞きました。

【年齢別特集 小学校低学年ママ・パパ向け】
(1) 不安定な新学期 「親独占タイム」作り向き合う
(2) 低学年の心のケアはスキンシップがすべてではない←今回はココ
(3) 低学年はどこまでOK? 放課後の一人外出ルール
(4) 平日の習い事 何歳から、どこまで自分で行ける?

 子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

ケアポイント1:心のエネルギーの回復は、年齢に合わせた対応を

 子どもは学校に行くだけでエネルギーを消耗、借金状態に 

 小学校低学年の子どもは、友達と遊ぶために早く登校したり、下校時も走って帰ってきたりと、元気いっぱいなイメージがありますが、掛井さんによると、どんなに楽しそうにしていても、学校に行くだけで子どもはかなり「心のエネルギー」を消耗するのだといいます。

 「慣れている環境で普段通り生活を送っていても、持っているエネルギーを1日で使い切って帰ってくるのが子どもです。使ったエネルギーはご飯を食べたり、リラックスしたり、睡眠を取ったり、親子でコミュニケーションを取ったりすることで回復するのですが、例えば学校で嫌なことを言わることで、余分なエネルギーを消耗したりします。そのうえ、家に帰ってお母さん(お父さん)に話を聞いてもらおうと思っていたのに、親が時間が取れず話せないままになると、回復しきれないまま翌日を迎え、また学校に行かなければならなくなります」

 特に新学期は環境が変わることでエネルギーの消耗速度が増す時期です。掛井さんは「子どものエネルギーレベルがマイナスにならないように、まずは慣れるまであれこれいっぺんにスタートせず、家は回復の場として子どもが安心できる空間にしておくことが大切です」と言います。

 また、子どもの生活の基盤となる家庭環境の変化もエネルギー消耗を加速する要素となり得ます。「新年度が始まるこの時期は、子どもだけでなく、親も部署異動だったり転勤だったり昇進だったり、変化が大きい時期です。例えばお父さんが単身赴任になった、お母さんが異動後忙しくなった、さらには祖父母が介護が必要になった、きょうだいが生まれたといった変化により『親がゆとりがなさそうだな』と思えば、子どもは気を使って自分のことを話さなくなることもあります。すると子どもは日ごとにエネルギーの借金を増やし、回復できないまま。するとだんだん、物事に過敏になり、少しのことで落ち込むなど、情緒不安定になりやすくなっていくんです」

 ではどうすればエネルギーを正しく回復できるのでしょう。

<次のページからの内容>

● スキンシップがすべてではない
● 子どもが関心を持っていることに、親が関心を持ち、一緒にやる
● 無理にグレードに合わせようとしない
● 責任感が強い子は親の言葉に従わなくてはと頑張り過ぎてしまう
● 子どものタイミングで動けるようにする