イライラしてささいなきっかけでキレる。暴言を吐き、友達や先生に暴力を振るう。小学校低学年の暴力行為が激増しています。なぜそんな状況が起きているのでしょうか。その背景と、子どもが問題行動を起こさないために親が心がけたいこと、などを専門家に伺いました。

【年齢別特集 小学校低学年のママ・パパ向け】
(1)アトピーは二極化 スキンケアの落とし穴に注意
(2)油断できない「冬の汗疹」と肌や頭皮の乾燥ケア
(3)急増する低学年の暴力 キレない子どもにするには ←今回はココ
(4)お友達に手を上げた 手を上げられたらどうする

子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

小学校1年生の暴力行為は3年間で3倍近くに

 「小学校低学年の暴力行為が急増しています。1~3年生はこの3年間で倍増以上、特に1年生は3倍近くになっています」。そう語るのは、小学校の学級崩壊に詳しい白梅学園大学子ども学部子ども学科教授の増田修治さん。文部科学省の平成28年度『児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査』(速報値)によると、1年生の暴力行為の件数(加害児童生徒数)は平成26年度の621人から1720人に、同じく2年生は1017人から2584人に、3年生は1316人から2963人に増えています。

 「1年生が学校生活に適応できなくて問題行動を起こす『小1プロブレム』という言葉は以前からあります。ですが最近は、『席に座れない』『教室を抜け出す』などのやんちゃと表現されるレベルではなく、友達や先生に暴力を振るう段階にまで至っています。暴力を振るうのに『なんかムカついたから』『そばにいたから』など理由がないのが大きな特徴のひとつです。常にイライラしていて、隣の席の子どもの腕が自分の体に触れただけで隣の子を殴る、また、他人に暴力を振るわなくても、自分の髪の毛を血が出るほど抜くなどの自傷行為をする子もいます」

 なぜそんな状況になっているのでしょう。増田さんはこう分析します。「他人がちょっと触れただけで殴ってしまうような子はスキンシップを嫌がる傾向があります。本来、人間はスキンシップが好きな動物ですが、小さい頃にスキンシップをしない親も増えていて、だんだん変化してきました。また、子どもは汚くなるのが“仕事”なのに、度が過ぎた『抗菌ブーム』の影響で、他人をバイ菌のように見てしまい、他者のスキンシップを受け入れられない結果を招いている可能性もあります」

 低学年に暴力行為が増えている要因は複数考えられますが、そのひとつに、子どものコミュニケーション能力の欠如がある、と増田さんは指摘します。

<次のページからの内容>
・自分の「イライラ」を言葉で表現できない子ども
・子どもが「ムカつく」のは悪いこと?
・年長~小学2年生の「中間反抗期」を見逃さない
・親の都合のよいときだけ褒めていませんか
・ルールを守らせるために大事なこと