中学受験に向けた塾通いの早期化、社会の変化と教育改革を見据えた英語塾やプログラミング教室の盛況など、以前に比べて早い時期に子どもを塾に通わせることを検討する家庭が増えています。一方で、小学3年生くらいの子どもは生活習慣や学習習慣などにおいてまだまだ発達途上の段階。塾に通わせようと思ったときに、どんなことに気を付ければいいのでしょうか。前回に続いて、教育ジャーナリストの中曽根陽子さんに聞きました。

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塾通いは、早いほどいいもの?

 塾に通わせるのは、学力をはじめとする子どもの様々な力を引き出し、伸ばすのがそもそもの目的です。それは果たして、「早ければ早いほどいい」のでしょうか?

 「いわゆる学習塾から英語、アートなど多様なものが学べるアフタースクールまで、低学年から通う塾の選択肢は広がっています。だからといって、早くから学んだ子とそうではない子にこれだけの差がつく、といったエビデンスがあるわけではありません。差があるとしたら、あくまでその子が興味を持ってやるかどうかによります」と中曽根さん。いつの時代も言えることは、「好きこそものの上手なれ」ということだけのようです。

大切なのは、脳の発達のプロセスに合わせた教育

 脳科学の研究が進む中で、脳の発達のプロセスは決まっていることが明らかになる一方、早期教育に効果があるという科学的な裏付けはないといいます。そして、勉強やスポーツ、芸術といった知育を考えるうえで重要なのが、脳の発達のプロセスに合わせて行うということ

 「小児科医としての臨床経験をベースに脳科学の研究をしてきた成田奈緒子先生によると、まずはからだの姿勢の維持や呼吸、食欲、睡眠といった、生きていくうえでの基盤になる働きをつかさどる『古い脳』をしっかりつくることが大事だといいます。その後に、記憶や思考、言語や情感をつかさどる『新しい脳』をつくる。そして最後に、人間らしさの脳と言われる『前頭葉』が育ちます。この順序は決して間違えてはいけないそうです

 「恐らく小学3年生あたりの時期は新しい脳づくり、つまり知育をやり始めるのにちょうどいい時期ではあると思います。ただ、古い脳を飛ばして新しい脳ばかりをつくろうとすると、後から困ったことが起きてくるという事例はたくさんあることが分かっています」

 脳の発達には順番がある。そのことと塾通いに、どんな関係があるのでしょうか。

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●「睡眠時間を削っても勉強」は間違いだった
●「お母さんが喜ぶから頑張る」に注意
●中学受験は、プロセスに価値を見いだす心構えで
●変化の激しい時代だからこそ、親も一緒に学んで