小学3年生ごろになると、学童よりも外の世界に興味を持ち始める子も増え、放課後の過ごし方も多様になってきます。「ちょっと早めだけど、塾に行かせてみようかな」と検討しているご家庭もあるのではないでしょうか。今どきの塾事情や、早めに塾に通わせる際に気を付けたい点について、中学受験や教育現場に詳しい教育ジャーナリストの中曽根陽子さんに聞きました。2回に分けてお届けします。

都心部では、塾通いが早まる傾向に

 共働きが増えていることもあって、小学校低学年のうちから何らかの教室に通わせている家庭が増えている実感があると中曽根さんは言います。

 「中学受験を目指すかどうかにかかわらず、放課後の時間を有効に使いたいという思いで、塾や塾兼お稽古事みたいなところに行かせていますね。特に都心部では、公立学童から、塾やお稽古の機能を備えたアフタースクールにはしごするといった掛け持ちも多いようです。そのためのお迎えサービスもあります」

 低学年から通う塾には主に次のようなところがあります。

 まずは、中学受験を目的とした学習塾が低学年のクラスを設けているケース。「『サピックス』が小学1年生からのクラスを設けていたり、『栄光ゼミナール』がジュニアコースやサイエンスコースを設けていたりと、大手進学塾の低年齢化が進んでいます。いずれも受験対策をするわけではなく、学習習慣や基礎学力を身に付けることを狙いとしていますが、これには、少子化の中、早いうちに生徒を確保したいという塾側の事情もあります。中学受験対策が本格化するのは小学4年生からですが、3年生はその橋渡し的な時期。受験対策にスムーズに移行できることを狙いとしていて、学校より難易度の高い内容を学ぶことになります

 学習塾には補習専門の塾もあります。こちらは学校の勉強の伴走という位置付けで、授業で学んだことがきちんと定着しているかを確認し、復習していきます。

 他には能力開発系の学習塾も。「『花まる学習会』は幼児の特性を生かしたプログラムで、学ぶ楽しさや思考力を育むことを狙いとしていますし、早くから読み書き計算といった勉強の訓練を行う『公文』のようなところもあります」と中曽根さん。また、最近は授業を聞くという受け身の形ではなく、ワークショップ形式で生徒たちが自ら考え、話し合って答えを探すことで学ぶ楽しさを知る探究創造型の学習塾も登場しているといいます。

進む塾の多様化、英語塾やプログラミング教室も

 学習塾以外も見てみると、最近増えているのが英語塾です。英語に特化したアフタースクールを多店舗展開しているところがあるほか、英語に運動の要素を組み合わせたプログラムを提供しているところもあります。グローバル化する社会を生き抜くために、早くから英語を身に付けさせたいというニーズがますます高まっているようです。

 さらに、2020年に小学校でプログラミングが必修化されることを受けて、プログラミング教室にも注目が集まっているといいます。「必ずしも低学年からやっておかなくてはいけないわけではないですが、『こうしたらこうなる』というように『順序立てて考える能力』が身に付くと言われていて、興味のある子にとってはすごく面白く感じられます。また、プログラミング教室にはみんなで一緒によりよいものを作っていくという側面もあるので、多面的な学びのツールになるとも言われています」

 塾といってもいわゆる勉強だけでなく、選択肢はかなり多様になっていると言えます。そうした中でも、学習塾について考える際にはまず、教育現場で起きている大きな変化を知ってほしいと中曽根さんは言います。これからの社会を生きていくために必要になると言われている、「21世紀型能力」です。

 一体、どんなものなのでしょうか。次ページから詳しく見ていきましょう。

<次のページからの内容>
● 2020年を節目に、教育の何が大きく変わる?
● これからの塾選びに大切なのは、「学力」にとどまらない視点
● 塾見学の際に必ずチェックしたい項目
● 悩みどころは切磋琢磨か、面倒見の良さか
● 評価に一喜一憂せず、子どもの成長を見守って

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